[ハノイ 28日 ロイター] – トランプ米大統領は28日、北朝鮮の金正恩(キム・ジョンウン)朝鮮労働党委員長との会談後の記者会見で、北朝鮮が制裁解除を要求したため、合意することができなかったと明らかにした。
トランプ大統領は「北朝鮮は全面的な制裁解除を要求したが、われわれはそれはできなかった」と説明した。
トランプ大統領は、会談では関係構築や非核化で進展はあったが、拙速に悪い合意を結ばないことが重要と考えたと語った。
会談は予定より早く切り上げられた。両首脳は予定していた昼食会を行わずに会談会場を離れたという。
トランプ大統領は、2日間の会談は非常に生産的だったとした上で「調印する文書を用意していたが、(調印は)適切ではなかった」と述べた。ホワイトハウスは、28日の会談終了時に「合意文書の調印式」を開催すると発表していた。
トランプ大統領は、金委員長は核・ミサイル実験は行わないと約束したと述べた。
トランプ大統領によると、会談では寧辺の核施設の解体を協議し、金委員長も意欲を示したが、委員長は制裁緩和を望んだという。
ポンペオ米国務長官は会見で「(金委員長に)一段の措置を求めたが、彼にはその準備ができていなかった」と語った。
トランプ大統領は、米国は北朝鮮の一部施設について査察を行うことができるとしたが、具体的な内容には触れなかった。
米朝首脳会談が合意に至らなかったとのニュースが伝わると、韓国ウォンは下落、アジア域内の株式市場は売りが膨らんだ。韓国株市場は1.8%安で終了、2018年10月以来の大幅な下落率を記録した。
国家安保戦略研究所(INSS)のシニアリサーチフェロー、リム・スホ氏は「両首脳が昨夜、微笑みを浮かべていたことを考えると、合意に至らなかったのは驚き」と話す。
「きょうは合意しなかったが、数カ月以内に合意しないというわけではない。シンガポール会談でのような実のない声明文を再び出すことができないほど、両首脳にとって重大事ということだ」と指摘した。
シンガポールで開催した初の米朝首脳会談後の共同声明では、金委員長が朝鮮半島の非核化に向けて努力すると表明するにとどまった。
トランプ大統領と金委員長が再び会談する可能性については、具体的には示されなかった。ただ、ホワイトハウスは「それぞれのチームは将来の会合を楽しみにしている」とした。
安倍晋三首相は28日にトランプ大統領と電話協議した後、記者団に対し、安易な合意を見送ったトランプ大統領の決断を支持すると表明。拉致問題の解決に向け「次は私が金正恩委員長と向き合わなければいけないと決意している」と述べ「今後とも日米でしっかり連携していく」と語った。
中国国営テレビによると、王毅外相は、中国を訪問した北朝鮮の李吉聖外務次官に対し、米朝協議において困難は避けられないとの認識を示した上で、中国として両国の対話継続を希望すると述べた。