[5日 ロイター] – 米労働省が5日発表した3月の雇用統計は、非農業部門の雇用者数が19万6000人増と、前月の17カ月ぶりの弱い伸びから加速した。 市場関係者のコメントは以下の通り。
●利上げ再開に必要な賃金圧力見られず=ブラウン・ブラザーズ
<ブラウン・ブラザーズ・ハリマン(ニューヨーク)の世界外為戦略部門責任者、ウィン・シン氏> 強弱が入り混じる内容となった。非農業部門雇用者数は予想を若干上回り、2月分はやや上方修正されたが、時間当たり賃金は期待外れな結果となった。
連邦準備理事会(FRB)が利上げを再開するためにはインフレが上向く必要があり、インフレが上向くには賃金圧力が高まる必要があるが、これはまだ見られていない。
完全雇用がほぼ達成される中で、上に行こうとしながらも、予想通りに離陸できない状態であることが示された。このため、強弱が入り混じる内容だったと考えている。
●賃金の伸び低調、利上げサイクルすでに終了の公算=ウエスタンユニオン
<ウエスタンユニオン・ビジネスソリューションズ(ワシントン)のシニア市場アナリスト、ジョー・マニンボ氏> まちまちだったが、全般的には堅調な結果となった。雇用者数の増加が健全に上向いたことで、リセッション(景気後退)懸念は和らぐだろう。 ただ賃金の伸びが弱かったことで、昨年12月の利上げが今回の利上げサイクルの中では最後のものとなる公算が大きくなった。
●ゴルディロックスな内容、市場は歓迎=フィエラ
<フィエラ・キャピタル(モントリオール)のグローバル・アセット・アロケーション担当、キャンディス・バングサンド氏> 一見では、ゴルディロックス(適温)な雇用統計だった。(非農業部門雇用者数などが)予想を上回り、市場に歓迎されることは明らか。大幅な経済減速に対する懸念の一部を払拭するのに役立つだろう。良いニュースだ。一方、インフレ面においては弱さが示された。賃金からの押し上げ圧力が乏しく、中銀は金融正常化に向けて慎重かつ現実的なスタンスを取るだろう。
今回の雇用統計では、中銀が積極的な金融引き締めを行う必要がないことが示されたが、経済成長が依然として健全かつ堅調で、強過ぎもせず、弱過ぎもしないことを市場は好意的に受け止めるだろう。非常に建設的な内容だった。
●経済懸念行き過ぎ、利下げ観測に歯止め=ファニーメイ
<米連邦住宅抵当金庫(ファニーメイ)の主任エコノミスト、ダグ・ダンカン氏> 全般的に明るい内容で、前月の急減速が一時的な振れだったことが明確になった。建設業の雇用は1万6000人増加し、前月分も上方修正された。これは住宅市場の供給に追い風となるだろう。
景気後退(リセッション)巡る懸念は行き過ぎだったと思われる。今後住宅ローン金利の伸びは小幅にとどまると予想され、住宅ローン申請は底堅い状態が続くだろう。賃金の伸びは堅調でないとはいえ、長期的な平均は上回っている。賃金インフレの心配はないが、利下げが必要との見方には歯止めがかかるだろう。