麻生財務大臣は昨日、2024年の上半期をめどに1万円、5000円、1000円札の券面を全面的に更新すると発表した。1万円は渋沢栄一、5000円は津田梅子、1000円は北里柴三郎の肖像に切り替わる。天皇退位に伴い元号が5月から令和に改元される。これに次ぐお札の刷新である。昨日からメディアは新しいお札に刻まれる3人の経歴などを紹介している。韓国が早速1万円札に起用される渋沢栄一を称して、「朝鮮半島の経済収奪の主役」と批判している。新札で対日批判とはいかにも韓国らしい反応という気がする。渋沢は日本経済の父、津田は女性活躍、北里は最先端科学の象徴とすれば、新札発行は安倍内閣の政策意図を反映した人選ということになる。

忘れてならないのは新札発行の経済効果だ。お札を新しくすれば、券売機や自動販売機の機能を刷新する必要がある。いずれどこかのシンクタンクが新札発行に伴う更新需要をはじき出すだろう。身の回りにある自動販売機を数えてみただけでも、更新需要は莫大な規模になりそうな気がする。平成はデフレと円高が蔓延した時代でもある。デフレによって庶民の生活も苦しめられた。異次元緩和と呼ばれた大胆な金融緩和をもってしても、デフレ脱却はいまだに道半ばである。簡単ではないことは実感としてわかる。来年の東京オリンピック・パラリンピックが終了すれば、五輪需要がごっそりとなくなる。そのあとは2025年の大阪万博までこれといったイベントは見当たらない。牽引役なき経済の先行きが心配になる。

おそらく政府もそこが心配なのだろう。新札発行でこの間隙を埋めようとの意図が透けて見える。オリンピック、改元、新札発行、大阪万博とつながれば、需要不足の下支え役がはっきりする。新元号・令和の評判も悪くない。改元で世の中の雰囲気が変わる。それに追い打ちをかけるように新札を発行する。大阪万博を最先端技術の祭典とすれば、世の中が変わりそうな雰囲気がいやが上にも高まる。そこが安倍政権の狙いだろう。アベノミクスに対する期待感は完全になくなった。それに代わる第二のアベノミクスを提案してもおそらく誰もついてこないだろう。そこにさりげなく経済対策を挟み込む。これで消費税のデフレ効果をしのげる。アベノミクスと言わない安倍政権の隠れた意図が見えてくる。