タイガー・ウッズがゴルフのメジャー第1戦となるマスターズで復活優勝した。ジョージア州オーガスタにある名門オーガスタ・ナショナルGCできのう最終ラウンドが行われた。43歳のタイガーは1位と2打差の2位でスタート。午後から雨の予想でアウトとインに分かれてスタートする異例の事態。アウトからスタートしたタイガーは70で回り、通算13アンダー、275で14年ぶり5度目の優勝を遂げた。賞金は207万ドル(約2億円)。タイガーは昨年も普通のトーナメントで優勝している。復活の兆しはあった。だからすでに復活していたともいえる。だが、個人的にはこの勝利が本当の意味でタイガーの復活だと思う。
2009年に不倫が原因で交通事故を起こして以来、タイガーは栄光の人生から転落した。そのあとはゴルフの話題で登場するとことはほとんどなかった。セックス依存症とか薬物依存症、怪我や病気による入退院の繰り返し。交通事故も起こしている。プロのアスリートとしては絶望的な転落で、世界中のファンの期待を裏切り続けてきた。2017年には薬を飲んで車を運転、逮捕されている。その時、警官に職務質問される姿がテレビで放映された。その姿はトレードマークの赤シャツを着て、グリーン上で大げさにガッツポーズを決め、雄叫びをあげる勇姿からは考えられない惨めなものだった。タイガーファンならずともこの姿を目にした人は誰でも、これでタイガーは完全に終わったと思ったはずだ。そのタイガーがオーガスタで復活した。転落からちょうど10年目の出来事である。
ゴルフはメンタルなスポーツだ。直径4.2センチのボールを14本のクラブでヒットし、少ない打数でカップに沈める。体に余分な力が入るとクラブがブレる。クラブがブレればボールのコントロールが効かなくなりスコアーが悪くなる。だから体の力を抜き、力強くスイングする。これがゴルフの要諦だ。優勝争いともなれば人間は自然と体に力が入る。この力をどうやって抜くか。矛盾する力学を肉体と精神でコントロールする。この点で際立って優れていたのがタイガーだ。その肉体と精神のバランスが崩壊、タイガーの失われた10年は地獄だった。そのタイガーが地獄から這い上がった。「ヤンキースタジアムでは勝利の瞬間、ファンが歓声を上げるなど競技の垣根を越え、全米を興奮に巻き込んだ」と時事通信は伝えている。
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