【ソウル時事】北朝鮮による短距離の飛翔(ひしょう)体発射には、経済制裁に屈せず、軍事力向上を図っていく姿勢を強調する狙いがありそうだ。また、軍事的緊張を一定程度高め、制裁の緩和実現に向け、米韓から譲歩を引き出そうという思惑もあるとみられる。金正恩朝鮮労働党委員長は、トランプ米大統領との3回目の首脳会談をにらみながら、小規模な軍事的挑発を続ける可能性が高そうだ。

 正恩氏は4月12日の施政演説で、3回目の米朝首脳会談に応じる用意を示しながらも、「一方的に自分の要求のみを押し付けようとする」と米国を批判。「今年末までは米国の勇断を待ってみる」と述べ、完全な非核化実現まで制裁の緩和・解除はないという立場を堅持するトランプ政権に対し、方針転換を要求した。また、制裁維持で米国に同調する韓国にも不満をあらわにした。

 さらに、同25日のプーチン大統領との会談では「朝鮮半島情勢は元の状態に戻りかねない危険な状況だ」と警告。「朝鮮半島の平和と安全は、全面的に米側の今後の態度に左右され、われわれはあらゆる状況に備える」と明言し、米国の態度が変わらなければ対話路線の見直しも検討する構えを示していた。

 ただ、今回発射されたのは、国連制裁の対象となる弾道ミサイルではないとみられており、制裁違反で孤立を深める事態は避けたいという意図もうかがえる。このため、今後も、制裁違反を回避しながら、挑発を繰り返す戦術を取るとみられる。