[ワシントン 22日 ロイター] – レアアース(希土類)は、iPhone(アイフォーン)や電気自動車(EV)のモーターなどの消費財から、軍用機のジェットエンジンや人工衛星、レーザーに至るまで、幅広い製品に使われている。 

貿易問題を巡って米国との緊張が高まっていることを受け、最大の供給国である中国が、レアアースを交渉材料に使うのではないかとの懸念が出ている。 

●レアアースは何に使われているのか 

レアアースは、EVやハイブリッド車の蓄電池のほか、最先端のセラミック、コンピュータ、DVDプレーヤー、風力タービン、自動車用や石油精製所向けの触媒、モニター、テレビ、照明、レーザー、光ファイバー、超電導体、そしてガラス研磨剤に使われている。 

ネオジムやジスプロシウムなど数種類のレアアースは、EVのモーターに不可欠だ。 

●レアアースの軍事使用 

ジェットエンジンやミサイル誘導装置、ミサイル防衛システムや人工衛星、そしてレーザーなどの軍事装備に欠かせないレアアースもある。 

その1つであるランタンは、暗視装置の製造に必要となる。 

米会計検査院の2016年の報告書によると、米国のレアアース需要は世界全体の9%。そのうち米国防総省の需要は1%を占める。 

●中国の供給に依存している企業は 

防衛大手の米レイセオン(RTN.N)やロッキード・マーチン(LMT.N)、英BAEシステムズ(BAES.L)は、いずれも最新鋭のミサイルを手がけ、その誘導装置やセンサーにレアアースを使っている。3社とも、ロイターのコメントの求めに応じなかった。 

米アップル(AAPL.O)は、スピーカーやカメラ、さらにハプティック(触覚)と呼ばれるスマートフォンを振動させる技術にレアアースを使っている。同社によると、1台あたりの使用量はごくわずかで、取り出すのが難しく、一般的なリサイクル業者からは入手できないとしている。 

2010年以降、米政府や企業はレアアースやそれを使用する部品の在庫を増やしていると、かつて国防総省で調達を担当し、現在はノートルダム大で教えるユージーン・ゴルツ氏は言う。 

同氏によると、一部サプライヤーはレアアースの使用量を減らしている。 

●レアアースとは何か。どこにあるのか 

レアアースとは、ランタン、セリウム、プラセオジム、ネオジム、プロメチウム、サマリウム、ユウロピウム、ガドリニウム、テルビウム、ジスプロシウム、ホルミウム、エルビウム、ツリウム、イッテルビウム、ルテチウム、スカンジウム、イットリウムの計17元素の総称。地球の地殻中に存在する。 

レア(稀な)という名前だが、実際は一定の埋蔵量がある。しかし、その採掘とクリーンな精製にはコストがかかる。 

中国は世界の精製能力の大半を有しており、2014─17年に米国が輸入したレアアースの80%が中国産だった。米地質調査所のデータによると、中国は2017年、世界のレアアースの81%を生産した。 

レアアースを輸入する各国は、2010年に起きた日本と中国の対立を受けて、消費量と中国依存を減らそうとしているが、その取り組みは限定的だ。日本は同年、中国が政治的な理由からレアアースの輸出を止めたと指摘。単一の供給国に依存することへの警戒感が世界に広がった。中国側は、輸出を停止したとの指摘を否定している。 

世界のレアアース埋蔵量の37%を占める中国と競争できる代替供給国はほとんどない。 

カリフォルニア州のマウンテン・パス鉱山は、米国で操業している唯一のレアアース採掘施設だ。だが、同鉱山を所有するMPマテリアルズは、掘り出した年間約5万トンのレアアースを精製のため中国に輸送している。中国は今回の貿易戦争で、こうした「輸入品」に25%の関税をかけた。 

オーストラリアのライナス(LYC.AX)は今週、米テキサス州のブルーライン社との間で、米国でレアアース精製施設を建設する覚書を交わしたと発表した。 

レアアースは他に、インドや南アフリカ、カナダ、オーストラリア、エストニア、マレーシア、ブラジルで採掘されている。 

●米国の関税措置はレアアースにどう影響するか 

これまでのところ、米政府はレアアースを関税対象の中国製品から外している。 

●中国依存を減らすには 

複数の米上院議員は今月、国内供給の拡大を後押しする法案を提出した。 

リサイクルも、新たな可能性として浮上している。ネブラスカ州の企業レアアース・ソルツは、古い蛍光灯をリサイクルし、蛍光管の20%を占めるレアアースを回収しているという。 

(翻訳:山口香子、編集:久保信博)