自宅で取材に応じるケイナン・ギラドさん=5月26日、イスラエル中部ベトシェメシュ

 【エルサレム時事】イスラエルでユダヤ教に改宗し、同国中部で超正統派として暮らす日本出身のケイナン・ギラド=旧名石塚健志=さん(51)。宗教的でないイスラエルのユダヤ人に対し、「日本人」であることを生かして教えの大切さを説く異色の存在だ。

「ユダヤ教超正統派」

 イスラエルはパレスチナ問題を抱え、パレスチナ自治区ガザから「占領や経済封鎖への抵抗」としてロケット弾が飛んでくることもある。ギラドさんは「全て神の仕業で、ガザの人たちを憎んだりしない」と述べ、攻撃される原因はユダヤ教に忠実でないイスラエル人の側にあると考えている。聖書の戒律を守らないと天罰が下されると強調、「やるべきことは(ガザに)ミサイルを撃ち返すことではない」と主張した。

 北海道北見市で生まれ、兵庫県で育った。学生時代に英語を教わったイスラエル人女性が「強い信念を持っていた」ことに感銘を受けた。イスラエルに渡航し、ラビ(ユダヤ教指導者)の下で改宗、改名。日本国籍を離脱し、イスラエル市民権を得て中部ベトシェメシュで家族と暮らす。日本で学んだレントゲン技師の技術を生かし、生計を立てている。

 超正統派特有の黒い服装で生活しながらも、顔立ちは東洋人。「毎日のようにどこから来たのと聞かれ、日本と言うと興味を持たれる。超正統派には日ごろ近づかないような人も話し掛けてくれる」。教えの大切さを伝えるのは「自分に与えられた役目。『日本人』にしかできない」と思うようになった。話した相手からは、戒律を守ることに前向きな反応が得られ、手応えを感じている。

 「反ユダヤ主義の考え方が世界で広がっている」と憂慮し、ユダヤ人以外との対話も重要と考えている。日本の人々に「ユダヤ教を紹介するのも、すごく大切だ」と語った。