厚労省はけさ、4月分の毎月勤労統計を発表した。それによると現金給与総額は27万7261円で前年同期比0.1%減だった。減少額はわずかだが、前年同期比マイナスはこれで4カ月連続である。念のため各月のマイナス幅を列記すると1月が0.6%、2月が0.7%、3月が1.3%である。平成最後の4カ月は勤労者にとって受難の時代だった。この間の消費者物価の上昇率は1、2月がそれぞれ0.2%、3月が0.6%、4月が1.0%である。これを勘案した実質賃金は1月がマイナス0.7%、2月が同1.0%、3月が同1.9%、4月が同1.1%となっている。実質賃金は1−4月の累計で前年同期に比べ4.7%減少した。実質GDPは1−3月に2.1%増えている。そんな中での実質賃金の大幅低下。日本の経済運営は何かが変だ。
勤労者にとって痛いのは実質賃金の減少だけではない。4月からは食料品をはじめ生活関連物資の値上げが相次いでいる。電力・ガスといった公共料金に加えて、郵便料金も値上げされる。要するに収入が減って支出が増えるのである。10月に消費税は8%から10%に引き上げられる。ただでさえ苦しい家計を消費税が直撃する。弱り目に祟り目とはこのことだ。まして消費税は逆進性が強い。富裕層には大して影響はないが、ただでさえ手取りが減っている一般庶民にはことのほか響く。政府は「リーマン級の激変がない限り消費増税を実施する」(安倍首相)との建前を崩していない。米中の貿易摩擦や英国のEU離脱に伴う混乱など、世界経済は不安材料に事欠かない。不安が景気後退を招き寄せる可能性もある。
経済の先行きは不透明である。不安材料が多いことが不透明感を強くしていることは間違いない。だが、経済の先行きというのはもともと不透明なのだ。何が起こるかわからない。先行きが不透明であるということを前提に経済は運営されるべきだ。不安材料を取り除くことももちろん大事だが、それ以上に重要なのは「不透明感」を払拭する経済政策を打ち出し、それを実行することである。「デフレ脱却」を目指すアベノミクスは政策の方向としては正しい。だが、それを遂行する能力に欠けている。リーマン級のショックが起こらない限り、消費増税を実施すると言っている。そして消費増税は実施される。問題はこのあとだ。消費増税によって日本経済はリーマン級のショックに見舞われる。日本の“主流派”はどうして同じ誤ちを繰り返すのだろうか。
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