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トランプ米大統領=2019年5月27日、東京・元赤坂の迎賓館、代表撮影

 米ブルームバーグ通信は24日、トランプ大統領が最近、親しい人物との私的な会話のなかで、日米同盟の基盤となる日米安全保障条約は不平等として、破棄する可能性について言及したと報じた。日本が他国から攻撃を受けると米国が防衛の義務を負うのに、日本には米国を防衛する必要がないことを「一方的」などと批判したという。

 同通信は事情に詳しい3人の関係者の話として報じた。トランプ氏は日米安保条約の破棄を語ったが、具体的な動きはなく、複数の米政府当局者も「そのような動きはあり得ない」と指摘しているという。

 日米安保条約では「日本国の施政の下にある領域」での武力攻撃について、日本と米国が「共通の危険に対処するように行動することを宣言する」と明記。米国には集団的自衛権を行使して日本を防衛する義務があり、日本には米軍に基地を提供する義務がある。

 同通信によると、トランプ氏は日米両政府が進める沖縄の米軍基地の一部返還について、「土地の収奪」として金銭補償を日本側に求める考えも示したという。特に、2022年度以降の返還で安倍政権とオバマ前政権が合意した米軍普天間飛行場(宜野湾市)の土地は、約100億ドル(約1兆700億円)もの価値があると発言したという。

 また、トランプ氏は24日、米国とイランの緊張が高まっている原油輸送の要所、中東ホルムズ海峡について、「中国は原油の91%、日本は62%、他の多くの国々も同様に海峡経由で輸入している。なぜ我々が他国のために無報酬で航路を守っているのか。こうした国々は常に危険な旅をしている自国の船舶を(自国で)守るべきだ」とツイッターで訴えた。その上で「米国は最大のエネルギー生産国になっており、そこ(ホルムズ海峡)にいる必要はない」と強調した。

 トランプ氏は、「米国は世界の警察官ではない」というのが持論。米軍の外国駐留は公金の無駄遣いとして、同盟国に「公平な負担」を求めるなど、同盟関係を軽視する発言をこれまで繰り返してきた。

 一方、菅義偉官房長官は25日午後の記者会見で、同通信の報道について「報道にあるような話は全くない。米大統領府からも米国政府の立場と相いれないという確認を受けている」と述べた。日米安保条約の意義については「日米同盟関係の中核をなすものであると考えている」と強調した。(ワシントン=土佐茂生)