東南アジア諸国連合(ASEAN)外相との協議に臨んだ中国の王毅外相(中央右)と各国外相=7月31日、バンコク(EPA時事)

【バンコク時事】中国の王毅外相はバンコクで開かれている一連の東南アジア諸国連合(ASEAN)関連会議で、中国が軍事拠点化を進める南シナ海情勢に関連して、紛争防止の取り組みでASEANとの協力関係を強調した。しかし、ASEAN内にも温度差があり、外相会議の共同声明の南シナ海に関する文言は最後まで揺れた。

 王外相はASEANとの外相会議で、南シナ海の紛争防止に向けてASEANと中国が策定を進める「行動規範」について、第1段階の検討作業が予定より早く完了したと宣言した。「中国とASEAN諸国には合意に達する能力と知恵、決意がある」と協調関係を誇示した。

 中国は行動規範に、米国などを念頭に域外国の関与を制限する条項を盛り込もうとしている。見え隠れする中国の域外国排除の意図に、日米などは警戒を強める。王外相は行動規範に関し、「すべての国の航行の自由が保障される」と力説。域外国には「策定に建設的役割を果たしてほしい。中国とASEANの間に不信感を芽生えさせるべきではない」と注文を付けた。

 米国への対抗上、ASEANを懐柔しようとする中国に対し、ASEANも一枚岩ではない。中国の巨大経済圏構想「一帯一路」の拠点の一つで、中国企業によるインフラ整備が進むカンボジアがなびく一方、南シナ海の領有権を争うベトナムは反発を強めている。

 ASEAN外相会議の共同声明は、当初の草案では「幾つかの懸念に留意」という以前と同じ表現を踏襲。その後、より踏み込んだ「深刻な懸念を表明」との文言に変わった。ベトナムなどが求めたとみられるが、カンボジアが緩和を求めて最後まで抵抗。最終的に発表された声明は「深刻な事案に懸念を表明」となり、従来の表現をやや強める内容に収まった。