[ワシントン 15日 ロイター] – 国際通貨基金(IMF)は15日に発表した世界経済見通し(WEO)で2019年成長率を3.0%に下方修正し、08―09年の金融危機以来の低い伸び率になると予想した。貿易摩擦が解消されなければ見通しは大幅に悪化する可能性があると言及した。
7月時点の見通しは3.2%だった。
新たに就任したゲオルギエワ専務理事は、通商政策の行き詰まりやIMFが融資条件として指定する緊縮政策への各国の反発などさまざまな課題に面している。WEOは今週開催されるIMFと世界銀行の年次総会を前に発表された。
IMFの首席エコノミスト、ギータ・ゴピナート氏は、主要各国の中銀が相次ぎ導入する金融緩和政策がなければ、今年の世界成長率は2.5%になると予想。「成長の弱さは製造業と世界貿易の急速な悪化が起因」とし、関税引き上げや長期化する政策の不透明感が投資や消費財への需要に打撃を与えていると述べた。
WEOは、これまで各国が課した関税により20年までに世界経済の成長率が0.8%抑制されると試算。ゲオルギエワ専務理事は先週、これが7000億ドルの国内総生産(GDP)に相当するし、スイスの経済が消えてしまう規模だと指摘した。
ゴピナート氏は15日の声明で、米中が10月15日と12月15日の関税制裁をやめた場合、抑制幅は0.8%でなく0.6%に縮小すると見通した。
さらに、18年初めから始まった米中の関税引き上げ措置が全て撤廃された場合、20年末までに世界成長率が0.8%押し上げられるとの試算を示した。
米中が11日に第1段階の部分合意に至ったことには歓迎しつつも慎重な姿勢を示した。詳細な合意内容が分からないとしたほか、世界経済の重しとなっている貿易摩擦を解消するために両国が対話を続けるように促した。
WEOによると、20年の成長率は3.4%増へ加速。ブラジルとメキシコ、ロシア、サウジアラビア、トルコの経済が改善するとの見通しだ。ただ、7月時点の予測からは0.1%ポイント下方修正。さらに、貿易摩擦の悪化や英国の欧州連合(EU)離脱を巡る混乱、金融市場におけるリスク回避などの下振れリスクもある。
また、世界の貿易量は19年上半期の伸びが1%と、12年以来の弱さだった。関税や通商政策の先行き不透明感、自動車産業の低迷が影響した。18年に3.6%増えた後、19年は1.1%増となる見通し。7月の予測から1.4%ポイント、4月の予測から2.3%ポイント低下している。20年伸びは3.2%へ持ち直す見込みだが、下振れリスクに左右されやすいと警告した。貿易は米中両国の経済を大幅に抑制する可能性があるとした。
現在の関税シナリオの下、中国の国内総生産(GDP)は短期的に2%、長期的に1%押し下げられるとした。米国のGDPは短期的・長期的に0.6%押し下げられる見込み。
ゴピナート氏は「成長を再び活性化するためには貿易の障壁を取り除き、持続可能な通商政策で合意する必要がある。また地政学的緊張感を和らげるほか、各国は国内政策の先行き不透明感を減らさなければならない」とした。