[香港 19日 ロイター] – 香港政府に抗議する学生デモ隊が占拠し、警官隊が包囲している香港理工大学では、キャンパス内に依然として約100人のデモ隊が残っている。
香港政府トップの林鄭月娥(キャリー・ラム)行政長官は19日、記者会見で、大学のキャンパスが「武器工場」になってしまったことにショックを受けているが、理工大での立てこもりが平和的に解決されることを期待すると述べた。
その後、「夜8時までに約300人の未成年者が安全に退去した。キャンパス内にまだ残っている他の未成年者も即刻退去してほしい。あなた方の帰りを家族は待ちわびている」とインターネット交流サイトのフェイスブックに投稿した。
警察発表によると、午後11時までに約800人が大学構内から退去した。過去24時間での逮捕者数は約1100人。この日病院に搬送された負傷者は約235人に上った。
現場のロイター記者によると、十数人のデモ参加者が大学の下水道施設からの脱出を図ったが、失敗に終わった。身をかがめてトンネル内に進入しようとしたものの、トンネルが狭すぎたという。キャンパスから退去した20歳の学生は「警察が全員を逮捕する方針なのは明らかだ」と述べた。
香港の高等法院(高裁)は前日、デモ参加者がマスクなどで顔を隠すことを禁止する覆面禁止法に違憲判断を下したが、これに対して中国全国人民代表大会(全人代、国会に相当)常務委員会は、香港の裁判所には「覆面禁止法」などの合憲性を判断する権限ないと表明した。新華社が19日伝えた。
香港警察のトップである警務処長に就任したクリス・タン氏は、警察だけでは抗議デモを沈静化させることはできないとして香港市民に支持を求める一方、「偽ニュース」が香港警察の評判をおとしめていると訴えた。
同氏は「香港では大規模な法律違反がみられる。社会の一部もそうした違法行為を認めている」と述べた。
18日夜には、数十人のデモ参加者らがロープを伝って歩道橋から幹線道路に下りて脱出する様子が見られた。道路には複数のバイクが待機しており、脱出したデモ参加者らを乗せて逃走した。
九龍半島の中央部に位置し、繁華街にも近接する香港理工大は、デモ隊が占拠している最後の大学となっている。デモ参加者らによると、キャンパス内では食料などの物資が急速に減っている。
抗議活動への参加者は最近、数こそ減っているとされるが、先週、警察がデモ隊に実弾を発砲したり、抗議活動に反対する男性が何者かに火をつけられるなどの事件が起きた後、デモ隊と警察の衝突は激化している。
デモ隊は建物に放火したり、九龍半島と香港島を結ぶ海底トンネルを封鎖するなど、抗議活動をエスカレートさせている。
一部の列車は運休し、九龍半島の多くの道路が閉鎖されたままだ。すべての学校が19日も休校となった。