[香港/深セン 26日 ロイター] – 中国政府の指導部は、香港のデモによる混乱収拾に向け、香港に近い本土側に危機管理センターを設置、これを出先機関である香港連絡弁公室に代わる正式な連絡本部とする案を検討している。事情に詳しい複数の関係者が明らかにした。 

香港で激しい抗議活動が繰り広げられるなか、中国指導部は数カ月前から同国南部の深セン市郊外にあるリゾート施設内に設置した危機管理センターで対応策を講じる体制をとってきた。 

関係筋や公式メディアによると、「バウヒニア・ヴィラ」にある施設は連絡弁公室が所有。香港との境界線近くの木々に覆われた人目につきにくい場所にあり、中国政府の高官は、2014年に香港で民主化を求める市民が道路を占拠した「雨傘運動」の際もこのリゾート施設に滞在している。 

関係筋によると、今回の反政府デモを受け、中国当局は香港の当局者や財界トップ、親中派の政治家をこの施設に呼び出している。当局者などによると、中国の習近平主席はバウヒニア・ヴィラから毎日文書で報告を受けているという。 

中国政府と香港とのやりとりは従来、香港連絡弁公室を通じて行われていた。連絡弁公室は最上部にガラスの地球儀がある香港の高層ビルに所在し、周りは鉄の柵に囲まれている。 

2人の関係者によると、中国政府は連絡弁公室の王志民・主任の交代を検討しており、弁公室の危機対応への本土側の不満を物語っている。王氏は香港に駐在する中国政府当局者のなかでは最高位にある。 

中国政府のある当局者は「連絡弁公室は香港に住む富裕層や本土からのエリート層と交流しても、香港市民からは孤立してきた」と指摘。「これを変える必要がある」とした。 

24日に実施された香港区議会議員選挙で民主派が圧勝したことを受け、連絡弁公室には一弾と圧力が強まる可能性がある。 

中国外務省の香港出先機関は26日、報道は「誤りだ」との声明をウェブサイトに掲載。「香港の状況がどう変化しても、国家主権、安全保障、発展の利益を守る中国政府の決意は揺らがない」と表明。中国は香港に適用される「一国二制度」を堅持しており、「対外勢力」が香港の問題に介入することに反対すると述べた。 

中国国務院の香港・マカオ事務弁公室と香港連絡弁公室はファクスによるコメントの求めに応じていない。 

香港に詳しい政治評論家のソニー・ロー氏は「香港情勢に対して中国当局の不快感は増すばかりだ」と指摘。中国の当局者はセキュリティーと裁量権確保のため、「香港ではなく深センを、香港の危機に同時並行で対応するための本部に選んだ」と分析した。 

事情に詳しい関係者1人によると、6月9日に100万人規模のデモが行われた直後、香港情勢を管轄する中国の韓正副首相は香港政府トップの林鄭月娥(キャリー・ラム)行政長官に対し、連絡弁公室経由でなく自身の事務所と直接連絡を取ることを認め、事実上のホットラインを作った。 

3人の関係筋によると、その後に中国の公安省、国家安全省を含む省庁の副大臣級の幹部がこぞってバウヒニア・ヴィラを訪れたという。また、同施設を通じて、香港・マカオ事務弁公室の張暁明・主任と韓副首相が水面下で、香港の指導部と緊密な連携をとってきたことが関係筋の話で明らかになった。