会見場に入る日産自動車の前会長カルロス・ゴーン被告=2020年1月8日午後、レバノン・ベイルート、恵原弘太郎撮影
世界の注目が集まるなか、日産自動車前会長のカルロス・ゴーン被告(65)が8日、逃亡先のレバノンで初めて、公の場に姿を現した。自ら設定した記者会見で繰り返したのは、日本の司法制度への批判と、自らの正当性だった。
ゴーン前会長は会見予定時間の10分前の8日午後2時50分(日本時間8日午後9時50分)ごろ、赤系のネクタイを締めた黒っぽいスーツ姿で、妻キャロルさんとベイルートにある会見場に入った。室内を埋めた100人以上の報道陣を見渡し、笑みを浮かべた。
質問を受けるのに先立ち、ゴーン氏は1時間以上にわたり、身ぶり手ぶりをまじえ、険しい表情で自らの声明を述べ続けた。「検察官から『あなたが自供すればすぐに終わる。自供しないなら、家族も追い回すことになる』などと繰り返し言われた」などと述べ、東京地検特捜部を批判。「逮捕された2018年11月19日以降、自由を感じる瞬間がなかった」「希望の見えない気持ちが大きかったが、無実を示すために闘ってきた」と語った。自らを支えてくれた関係者らに感謝の意を述べ、一部の記者から拍手が起きる場面もあった。
会見に参加した報道機関は、12カ国の約60社。前会長本人が参加するメディアを選んだという。朝日新聞も参加が認められた。朝日新聞は、前会長が一昨年11月に逮捕された直後から取材を申し入れてきた。
ゴーン前会長の周辺によると、前会長は昨年12月30日にレバノンに入国してから自宅などに滞在し、周辺で待機する報道陣を窓越しに気にすることもあった。12月下旬に東京都内でも会ったという知人の女性は「レバノン入りしてからのゴーン前会長は、体形がふっくらとして健康的になったように見えた」と語った。
会見に先立ち、レバノンの首都ベイルートにあるゴーン前会長の自宅前にはこの日午前から、国内外の報道陣が集まった。会見場周辺には複数の中継車がとまり、各国のテレビ局が現場からリポートするなど、注目の高さがうかがえた。(ベイルート=高野遼、石原孝)