[ジュネーブ 30日 ロイター] – 世界保健機関(WHO)は30日、感染が急速に拡大している新型コロナウイルスによる肺炎について、国際的な公衆衛生上の緊急事態を宣言した。 

中国・湖北省武漢を発生源とする新型肺炎の死者は170人に達した。これまでに死亡が確認されているのは中国国内のみだが、感染は18カ国に拡大し、世界の感染者は約8000人となった。人から人への感染ケースも引き続き確認されている。 

WHOのテドロス事務局長は同日開いた緊急会合後、国際的な緊急事態に相当すると発表した。WHOは先週開いた2回の会合で、時期尚早として宣言が見送ったが、感染はその後、中国国外にも急速に広がった。 

緊急事態宣言によって、感染拡大防止に向けた監視強化や措置拡充などが世界各国の保健当局に促されることになる。 

事務局長は、今回の判断が中国に対する「不信任」ではないと強調した上で、「最大の懸念はより脆弱な医療制度の国に感染が拡大する可能性だ」と語った。 

同時に、中国との取引や渡航の制限は勧告しないと述べた。 

米国ではこの日、人から人への感染例が初めて確認された。米疾病対策センター(CDC)によると、中国への渡航歴がある中西部イリノイ州の女性から夫に感染した。夫妻はともに60歳代。これで米国内での新型肺炎の患者数は6人となった。 

<経済的な影響> 

2002─03年に流行した重症急性呼吸器症候群(SARS)では、死者は約800人に達し、世界的な経済損失は330億ドルと推計されている。 

エコノミストは、世界経済に占める中国経済の規模拡大を踏まえ、新型肺炎による経済的な影響はSARSを超える可能性があると懸念する。 

中国で事業を展開する世界の企業は対応に追われ、一時的な営業停止や社員による中国への渡航制限などの措置を取っている。 

最新のケースでは、米アルファベット(GOOGL.O)傘下のグーグルが中国のオフィスすべてを一時的に閉鎖。 スウェーデン家具小売イケアも中国店舗の営業停止に踏み切った。 

世界の航空会社による中国便の運航見直しや運休も相次いでいる。 

エールフランス(AIRF.PA)、ルフトハンザ(LHAG.DE)、エア・カナダ(AC.TO)、アメリカン航空(AAL.O)、ブリティッシュ・エアウェイズ(BA)(ICAG.L)などはこれまでに中国本土への運航を見合わせた。