• 「後ろ手でなく先手打つ必要」、新薬と共にワクチンへの投資継続へ
  • 中国は向こう10-20年間に武田にとって日本を抜き2番目の市場に

新型コロナウイルスの感染拡大で、あることが明確になり始めている。製薬会社はワクチンへの投資を増やす必要があるということだ。

  武田薬品工業のクリストフ・ウェバー社長兼最高経営責任者(CEO)はインタビューで、「後ろ手の対応ではなく先手を打って対応する必要がある」と指摘した。調査会社スタティスタのデータによると、2019年のワクチン売上高は総額542億ドル(約5兆9500億円)と、世界の製薬会社の売上高の5%に満たない。

Virus Outbreak Underscores Takeda’s Bet on Vaccines, CEO Christophe Weber Says
インタビューに答えるリストフ・ウェバー・CEOPhotographer: Shoko Takayasu/Bloomberg

  中国湖北省を中心とした新型コロナウイルス感染拡大で1700人以上が死亡し感染者数は約7万人に達したことで、世界の製薬業界のワクチン投資不足に注目が集まっている。ワクチンは専門薬よりも収益性が低い。

  ウェバー氏は、武田に加わる前に英グラクソ・スミスクラインでワクチン事業を運営、19年には武田による620億ドル規模のシャイアー買収を率いた。ウェバー氏はワクチンを中核事業の一つとすることを目指している。武田は、ワクチン部門へのこれまでの投資額を開示していないが、向こう2年以内に同社初のデング熱ワクチンの承認申請を行う見込みだ。

  「治療やワクチンを提供するまでには常に時間がかかる」とウェバー氏は話す。

  世界の人口が増加し気候変動が進む中、ウイルス性疾患の発生は増えるだろうと同氏は予想。「新型コロナウイルスは、先進国に影響を及ぼしているため、話題になっている」と指摘。「あまり話題になっていないが、エボラ出血熱のような脅威もある。既に存在している脅威がたくさんあることを、われわれは忘れている」と述べた。

  このことは、武田でウェバー氏が直面する課題の一つを浮き彫りにしている。それは、競争の激しい製薬業界において収益性の高い医薬品の必要性と、広く公衆衛生の向上のために医薬品を開発する使命とのバランスを取るということだ。武田はシャイアー買収後、売上高で世界の製薬会社上位10位以内に入った。日本企業による外国企業の買収としては最大規模で、その規模と武田が抱えた債務の額に注目が集まった。

中国での長期計画は変わらず  

  買収から1年余りが経過し、相乗効果が順調に表れつつあるものの、ウェバー氏の見通しや、武田のパイプライン(新薬候補)についてはなお懐疑的な見方もある。武田の株価は低迷し、買収発表前と比較して20%以上下落している。

  モーニングスターのアナリスト、ジェイ・リー氏は「短期的には武田のパイプラインの中でブロックバスターとなる可能性があるのはほんの一握りだ。他の興味深い新薬候補とそれらの承認にはさらに長い期間を要する」と指摘。そのため、将来の売上高の分析や予想が変動しやすくなっているとの見方を示した。

  中国市場も重要だ。ウェバー氏は市場改革によって、より画期的な医薬品の開発が奨励されるため、向こう10-20年間に中国が日本を抜き武田にとって2番目に大きな市場になると予測している。新型コロナウイルス感染拡大を受けて中国での長期計画を変更する予定は同社にない。武田は、向こう3年間に15の新薬を中国市場に投入する計画だ。

原題:Virus Outbreak Underscores Takeda’s Bet on Vaccines, CEO Says(抜粋)