- 緊急購入は少なくとも21年6月末まで延長、行動の必要あったと総裁
- 増額幅の市場予想は5000億ユーロ、政策金利は据え置き
欧州中央銀行(ECB)は4日、新型コロナウイルス危機への対応を強化し、パンデミック緊急購入プログラム(PEPP)の購入額を6000億ユーロ(約73兆5000億円)増やすとともに、少なくとも2021年6月末まで継続すると発表した。
増額幅は市場予想を上回った。ブルームバーグが先週まとめたエコノミスト調査では5000億ユーロの増額が見込まれていた。
ラガルド総裁は政策決定後の記者会見で、景気底入れを示す初期の兆候が見られるものの、「改善はこれまでのところ、緩慢だ」とし、「行動する必要があった」と説明した。
ECBはユーロ圏の成長およびインフレ率の予想を下方修正した。総裁が明らかにした最新予測によると、基本シナリオで今年の域内総生産(GDP)は8.7%縮小し、21年にプラス5.2%へと立ち直る。だが、新型コロナウイルスの大規模な感染拡大が再発し、より深刻な展開をたどるシナリオでは、今年のGDPは最大12.6%縮小する可能性があるとした。
インフレの回復は遅く、22年平均もECB目標の2%弱を大きく下る1.3%にとどまると見込む。
3月に発表したPEPPの購入額7500億ユーロのうち3分の1程度しか費やしていないにもかかわらず増額に踏み切ったことは、ECBが市場の落ち着きを保つために迅速かつ大規模な行動を取る決意であることを示している。
ドイツ政府は3日に1300億ユーロ規模の新たな景気対策に合意。欧州連合(EU)の欧州委員会は7500億ユーロの共同復興基金を提案している。INGのユーロ圏担当チーフエコノミスト、カルステン・ブルゼスキ氏はブルームバーグテレビジョンとのインタビューで、「昨日はドイツで今日はECBだ。これは大きい」と話した。
ECBによる購入は、パンデミック対策で国債を増発する域内各国の借り入れコスト抑制を助ける。ECBは購入を「時間をかけ柔軟なやり方で、域内全域のさまざまな資産クラスで進める」と説明。また、購入した債券の満期償還金は少なくとも22年末まで再投資すると表明した。
ラガルド総裁によると、政策委員会はギリシャ国債以外のジャンク級債券を購入資産に含めることについては協議しなかった。また、行動する必要があるとの見解は「全会一致」だったが、最終決定された政策措置は「幅広いコンセンサス」による結果だと総裁は語った。
ドイツ連邦憲法裁判所が先月、「公的セクター購入プログラム(PSPP)」を一部違憲とする判断を下したことがECBの行動を制約するとの懸念は退け、「良い解決策を見つけられると確信している」と述べた。
ECBは政策金利を据え置き、マイナス金利の深掘りは控えた。
原題:ECB Unveils Bigger-Than-Expected Boost to Crisis Bond Buying (3)、*LAGARDE: HAVEN’T DISCUSSED ADDING CORPORATE JUNK BONDS TO PEPP、ECB Unveils Bigger-Than-Expected Increase in Crisis Bond Buying、ECB Extends Pandemic Purchase Program to at Least June 2021(抜粋)