非正規労働者の待遇格差をめぐる最高裁の判決が相次いだ。15日、日本郵便の契約社員が正社員との待遇格差の是正を求めた訴訟は、年末年始勤務手当や扶養手当などを支払わないのは不合理だと認めた一方、非正規労働者の退職金とボーナス(賞与)をめぐる13日の訴訟は、職務内容の差などを理由に不支給でも「不合理ではない」と判断した。多様な人材が集まり、いまや国内で2千万人を超える“非正規”という働き方に改めて注目が集まっている。その待遇は、どう考えていけばいいのか。

 雇用期間に定めがない正社員に対し、パートやアルバイト、派遣社員、契約社員といった非正規労働者は、一般的に有期契約。労働時間が短いケースもある。

 総務省の労働力調査によると、令和元年平均の非正規労働者は前年から45万人増加し2165万人で、労働者全体の約4割を占めている。大きな契機となったのが、バブル崩壊だった。企業の人件費抑制などを理由に、新卒大量一括採用や終身雇用といった「日本型雇用慣行」が崩れ、非正規での雇用が増加していった。

 労働者側から見ても、勤務の柔軟性という魅力などから、あえて非正規を選ぶ流れもあった。同調査で、なぜ非正規という働き方を選んだか理由を尋ねたところ、「自分の都合のよい時間に働きたいから」が625万人(30・6%)と最多だった。

 一方で浮上してきたのが同じ仕事をしていても給与などが異なるという待遇格差だ。昨年4月には、不合理な待遇格差をなくすことなどを目的とした働き方改革関連法が施行。大企業では今年4月から「同一労働同一賃金」が導入され、中小企業は来年4月から適用されることになっている。

 もっとも、13日の最高裁判決でポイントになったのは、正社員と非正規労働者との間にある業務内容や責任度合いの差だった。国内の大半の企業は、転勤などを含む人事異動など、多くの非正規労働者にはない勤務条件を課している。

 日本女子大の原ひろみ准教授(労働経済学)は、「正社員同士でも基幹的な仕事か否かで給与の差があるように、責任の重さなど仕事に違いがあれば、正社員と非正規労働者で賃金に差が出ることはある」とした上で、「同じ仕事内容にもかかわらず雇用形態の違いで金銭報酬や福利厚生、キャリアアップの機会などの処遇が異なるのが大きな問題。企業は非正規労働者への不合理なしわ寄せを改善する努力をすべきだ」と話す。

 「現役世代の男性正社員が長時間働き、それ以外は周辺的な労働力という時代は終わった。女性やシニアなど多様な人材が、生活上の制約がある中で能力を発揮できる環境を整えなければ、長期的には経営が立ち行かなくなるだろう」と指摘するのは、日本総合研究所の山田久主席研究員だ。

 一連の最高裁判決は、「ボーナスや退職金の是正を軽視していいことを意味しないが、企業により規定が大きく異なるのも事実。比較的規定が明確で、企業側の負担の少ない手当などからしっかり是正しつつ、個別に判断を積み重ね、裾野を広げていこうという意図を感じる」と分析。「非正規労働者の処遇改善は社会全体の大きな流れ。企業も、労働組合などに同一労働同一賃金を進めていく方針を説明し、合意形成していくことが重要だ」と話している。