【エルサレム時事】イスラム世界では、各国政府がフランスで相次ぐテロ事件を強く非難している。しかし、フランスがイスラム教の預言者ムハンマドを冒涜(ぼうとく)する風刺画などを「われわれの自由」(マクロン大統領)として容認することへの怒りは根強い。フランスによる過去の「イスラム教徒大量殺害」をやり玉に挙げる言説も目立ちはじめ、波紋は拡大の一途だ。
風刺画は権利、一歩も引かず 革命以来の伝統、世論支持―テロは「フランスへの攻撃」
トルコ外務省は29日、フランス南部ニースで起きたテロについて「礼拝の場での残忍な襲撃で、首謀者はいかなる宗教、人道、倫理に基づく価値観も有していない」と非難した。一方、エルドアン大統領は28日の演説でフランスなど欧州での「イスラム敵視や預言者蔑視」を糾弾。預言者冒涜を「(イスラム教の)価値観への攻撃」と断じ、対応を改めるよう求めている。
マレーシアのマハティール前首相は29日、ツイッターへの投稿で、フランスが歴史上多くのイスラム教徒を殺害したとして「イスラム教徒には多数のフランスの人々に対して怒り、殺害する権利がある」と主張。また、「フランスは国民に他者の感情を尊重するよう教育する必要がある」と訴えた。ツイッターでは「殺害する権利」に言及した部分が後に削除された。
預言者を侮辱するような風刺画や言説は「表現の自由の範囲を超えている」というのが一般的なイスラム教徒の感覚だ。このため「冒涜の自由」を再三主張するフランスの対応に嫌悪感を抱く人は多く、イスラム世界各地でフランス製品のボイコットを進める動きが活発化。29日にはサウジアラビア西部ジッダのフランス総領事館で襲撃事件も起きており、今後も情勢の悪化が懸念される。