【ベルリン時事】ドイツ中道右派与党・キリスト教民主同盟(CDU)の党首選が16日に行われる。メルケル首相は9月の総選挙に出馬せず引退する方針で、新たな党の顔を決める選挙となる。ただ、絶大な存在感のメルケル氏と比べ、出馬する3氏は迫力不足が否めず、新党首が首相候補となるかも不透明。ポスト・メルケルの行方は混とんとしている。

 出馬表明しているのは、メルツ元下院院内総務(65)、ノルトライン・ウェストファーレン州のラシェット首相(59)、レトゲン元環境相(55)。いずれも男性だ。1001人の代議員の投票による党首選は昨年4月に実施予定だったが、新型コロナウイルスの影響で延期され、オンラインで実施される。

 メルツ氏は2002年の総選挙でCDUが政権奪還に失敗した後、メルケル氏の要求で会派トップの院内総務の地位を追われた確執があり、「現状維持では立ち行かない」とメルケル氏の中道路線から保守色を強める構え。レトゲン氏もメルケル氏から環境相を罷免された因縁がある。一方、ラシェット氏はメルケル氏に近く、同氏の路線の継承者とみられている。

 CDU支持者への世論調査では、メルツ氏がリード。ただ、誰が勝利しても、総選挙で首相候補として戦うことが認められるかは定かでない。メルケル氏が18年末に党首を退いた後に後継に就いたクランプカレンバウアー現党首は当初、首相候補としても期待されたが、早々に支持を失い、昨年2月に辞意を表明。メルケル氏の影響力がいまだ強い中、党首が支持を集めることの困難さが浮き彫りとなった。

 党重鎮からは「必ずしも党首が首相候補になる必要はない」(ショイブレ下院議長)との声も出ている。姉妹政党キリスト教社会同盟(CSU)のゼーダー党首(54)を首相候補に推す案もある。