政府は、会社などの組織に属さず、フリーランスで働く人の法的保護を強化するため、業務発注時に契約書面の作成を義務付ける事業者の対象を拡大する方針を固めた。新型コロナウイルス禍でフリーランスの収入源が減る中、口約束の仕事を一方的にキャンセルされるなどのトラブルが相次いでいるためだ。来年の通常国会に関連法案を提出する方向で調整している。

 下請け取引の公正化などを定めた下請法では、資本金1000万円超の事業者がフリーランスに業務を発注する場合、取引代金の額や支払期日を記載した書面の交付を義務付けている。一方、資本金1000万円以下の事業者が発注する取引については義務付けの対象外となっている。

 政府が昨年2~3月に実施した調査では、事業者から業務を受注するフリーランスの約4割が、報酬の未払いや納品日の一方的な変更などのトラブルを経験している。このうち約6割は、口頭のやり取りだけで書面やメールを取り交わしていないか、取り交わしていても十分な記載がなかった。フリーランス側が最終的に「泣き寝入り」を迫られるケースも多いとされる。

 このため、政府はトラブルの防止や迅速な解決策として、資本金1000万円以下の事業者についても、フリーランスとの取引条件や契約内容を書面で残すことを義務付ける必要があると判断した。

 今後、フリーランスを対象にした実態調査を行い、業務の発注元の事業規模を把握する。そのうえで、契約書面の作成義務付けをどの程度の規模の事業者まで拡大するかを検討する考えだ。政府内では、下請法を改正するか、新法を制定する案が浮上している。

 フリーランスとして働く人はプログラマーや通訳、ライターなど様々な職種に広がり、全国で462万人に上ると推計される。働き方の多様化が進んでいることから今後も増加が予想され、政府はフリーランスへの支援を強化している。

 今年4月には、フリーランスとして働く俳優など芸能従事者やアニメーターなどを労災保険の対象としたほか、9月からは自転車を利用した宅配代行サービスの配達員とITエンジニアも加入対象とすることを決めている。