[東京 7日 ロイター] – トヨタ自動車は7日、2030年までに電動車用電池の生産と研究開発に約1兆5000億円を投資すると発表した。世界で脱炭素の流れが強まる中、ハイブリッド車(HV)や電気自動車(EV)などの需要拡大に向けて電池のコスト低減に取り組むとともに、生産体制を整える。
電池の生産に1兆円、残りを研究開発に充てる。車両と一体で開発を進めることで、1台当たりの電池コストを引き下げる。20年代後半には、来年発売する新型EV「bZ4X」に比べて50%の低減を目指す。
オンライン形式で会見した前田昌彦・最高技術責任者は、電池単体のコストを「材料や構造の開発によって30%以上の低減を目指す」と説明。車両の走行1キロメートル当たり消費電力も30%改善させて電池容量の削減につなげ、電池コストを下げる考えを示した。
より高性能な電池として期待される全固体電池については、20年代前半に実用化する従来の方針を維持した。前田氏は、現時点では寿命に課題があり、EVに搭載するには課題があると指摘。解決に向けて鍵となる固体電解質の材料開発を続けるとともに、早期に実現できる「HVにも適用したい」とした。
現在主流のリチウムイオン電池に比べ、全固体電池は安全性や充電時間などに優れているとされる。リチウムイオン電池の電解質は液体だが、全固体電池は固体のため、ショートしにくく発火などのリスクが小さい。重量当たりのエネルギー密度も高く、大きさが同じでも走行距離を延ばすことができる。
電池の生産は自動車を販売する各主要市場で行う方針。トヨタは自社で電池を内製するとともに、パートナー企業と協業している。投資額1兆円はその合算で、岡田政道・最高生産責任者は、電池生産量の拡大では「その地域に得意なパートナーとしっかり組む」と話した。
トヨタはパナソニックとの合弁会社プライムプラネットエナジー&ソリューションズ、中国の寧徳時代新能源科技(CATL)、比亜迪(BYD)子会社、東芝、ジー・エス・ユアサなどと電池生産で協業している。
生産する電池容量は180ギガワット時(GWh)と想定していたが、EVの早期普及を見据えて200GWh以上で準備を進める。岡田氏は「量が変動しても限られた量でも競争力が発揮できるようにする」と説明。EV用電池の生産ラインに関しては、25年ごろに「約10本のライン、26年以降から30年までに年間10本以上のペースで入れていき、トータル70本ほどを用意していく」と述べた。
トヨタは30年に電動車800万台の販売を計画。内訳はEVと燃料電池車(FCV)で200万台、HVとプラグインハイブリッド車(PHV)で600万台を見込む。