【シドニー時事】オーストラリアは、米英の協力によって原子力潜水艦を導入し、フランスとの潜水艦の共同開発計画を破棄する決定に同国が反発している問題で、事態の沈静化を図ろうと躍起になっている。だがフランス側との見解の食い違いは鮮明となっており、関係修復には時間がかかりそうだ。
モリソン豪首相は19日に記者会見し、他の閣僚とともに「数カ月前」に仏との潜水艦建造計画をめぐり懸念を提起していたと主張。フランスの失望に理解を示しながらも、中国の台頭などインド太平洋情勢の変化を考慮しており「戦略的な国益に基づく決定だ」と正当化した。
しかし、ルドリアン仏外相は「発表の直前」に米英豪の合意を知らされたと訴えている。モリソン氏は6月にパリを訪問し、マクロン仏大統領と会談。8月末には豪仏の外務・防衛担当閣僚協議(2プラス2)も開かれた。こうした場で豪州側が懸念を提起したとみられるが、説明不足だった可能性がある。
オーストラリアン紙によると、エティエンヌ仏駐米大使は「(潜水艦の共同開発は)われわれのインド太平洋戦略の根幹」と発言。同紙はフランスが破棄の「報復」として、欧州連合(EU)が豪州と交渉している自由貿易協定(FTA)に関して他のEU加盟国に見直しを促す考えだと報じた。
モリソン氏は20日、日米豪印の4カ国の連携枠組み「クアッド」首脳会議などに参加するため米国に向けて出発した。クアッドが目指すインド太平洋地域の安定化には太平洋に領土を持つフランスの協力も重要で、国際舞台でのモリソン氏の対応が注目されている。