【ワシントン時事】選挙で郵便投票や期日前投票がどこまで認められるかをめぐり、米議会で与野党が激しく対立している。投票への障壁や制約を最小限にとどめたいバイデン政権と与党民主党に対し、野党共和党が強く抵抗。2022年の中間選挙をにらみ、双方とも譲らぬ構えだ。
上院(定数100)は20日、民主党が提案した「自由投票法案」の採決に失敗した。法案自体の採決に先立ち、「フィリバスター」と呼ばれる議事妨害のための長時間演説を打ち切る動議に、共和党の全議員50人が反対。可決に必要な60票の賛成を確保できなかったためだ。
同種の法案が阻止されたのは、今年に入って3回目。民主党のシューマー上院院内総務は「民主主義を守る闘いは幕引きに程遠い」と述べ、引き続き立法化を目指す決意を表明した。
米国では、各州が連邦レベルを含む選挙の実施方法を規定している。自由投票法案は、郵便投票を認める要件や投票者の身元確認などで、全国基準の作成を盛り込むほか、有権者登録の手続きも容易にする内容。共和党は「選挙の実施方法(を決める権限)を全国で(州政府から)連邦政府に引き渡そうとするものだ」(マコネル上院院内総務)と強硬に反対している。
新型コロナウイルス下で行われた昨年の大統領選では、多くの州が郵便投票や期日前投票の要件を大幅に緩和。とりわけ郵便投票は民主党支持層が多く利用したと言われ、敗れたトランプ前大統領は「選挙が盗まれた」と言い続けている。
今年に入りフロリダやジョージアなど共和党知事を擁する州で、郵便投票などの制約を強化する法案が相次ぎ成立。自由投票法案は、そうした動きへの対抗策と言える。民主党内には規則改正によってフィリバスター阻止を目指す動きもあるが、議会が共和党多数になれば抵抗の手段を封じられる「もろ刃の剣」でもある。