[東京 6日 ロイター] – 自民党が新たに設置した財政政策検討本部の西田昌司本部長は6日、ロイターとのインタビューで、財政支出の規模はプライマリーバランス(PB、基礎的財政収支)の状況ではなく、インフレ率で調整すべきとの認識を示した。日銀の金融政策は限界を迎えており、財政主導でインフレ率2─3%にすべきとした。
積極財政派の西田氏は、日本経済がデフレから脱却できない根本原因は財政支出が縮小しているためだと指摘。国と地方を合わせたPBの黒字化目標を掲げたために長期的な計画を立てられなくなったと述べ、10年間で200兆円─300兆円財政支出を増やすべきとの考えを示した。
西田氏は「大事なのは長期的なインフラ整備や医療計画、研究開発、人材育成などの計画を立てることだ」と語った。4─5%程度までのインフレ率は許容範囲とし、それを超える場合は「財政拡大の量を減らしていくなり、税率を上げるなり、増税するなり、調整の仕方はいろいろある。PBではなくインフレ率で調整するべき」と述べた。
政府は今年の骨太の方針で2025年のPBの黒字化目標を堅持した一方、年度内に目標年度を再確認するとしている。
西田氏が本部長を務める財政政策検討本部は、最高顧問に安倍晋三元首相、顧問に高市早苗・政務調査会会長が就いた。一方、党には財政健全化推進本部(本部長:額賀福志郎氏)が存在するが、コロナ禍で経済再生が優先され歳出圧力が続く。
検討本部はエコノミストや学者などと議論し、提言をとりまとめて岸田文雄首相に提出する。来年の骨太方針や参議院選挙の公約に反映させることも視野に入れる。
西田氏は、自民党の財政政策への考え方は転換期に来ているかとの問いに、「少なくとも私はそう思っている」述べた。
大規模な金融緩和で2%の物価上昇率を目指した日銀の政策は「限界」だとも指摘。「早く2─3%のインフレ率になってるような状況にしなければいけないと前から言っている。そのためには、早く政府がそのことをに気づいて財政拡大すべき」と語った。
政府は2022年度予算編成の基本方針で、経済再生を財政再建より優先する方針を示した。デフレ脱却に向け、「危機に対する必要な財政支出は躊躇(ちゅうちょ)なく行い、万全を期する」とした。