岸田文雄首相が企業の自社株買い規制の可能性に触れたことで株式市場では、株価純資産倍率(PBR)や株主還元性向で規制する策はあるとの見方が浮上したが実現性は疑問視する声が出ている。

  東海東京調査センターの鈴木誠一チーフエクイティマーケットアナリストは、ルール逸脱のケースがない自社株買いの規制は極めてナンセンスと強調した上で「強いて言えば市場の評価がある企業の自社株買いは抑制が可能かもしれない」と述べた。例えばPBRが1桁倍の企業のみ許可するなどを挙げた。ニッセイ基礎研究所の森下千鶴研究員は「具体的には還元性向の水準制限はありえる」と語った。同時に企業規模の差もあり実際には難しいのではないかと付け加えた。

  T&Dアセットマネジメントの浪岡宏チーフストラテジストは「還元率などを制限して過度な自社株買いを抑えることなどは考えられる」と話した。その上であまり制限をすると経営者が魅力的でない投資に資金を回すリスクもあると指摘した。

岸田首相が自社株買い規制に言及、「ガイドライン」検討-株価下落

  岸田首相は14日の衆院予算委で自社株買いについて「例えばガイドラインとか、そういったことは考えられないだろうかということは思います」と答弁した。立憲民主党の落合貴之氏の質問に答えた。落合氏は2019年11月の衆議院本会議でも自社株買いのあり方について質問していた。

  JPモルガン・アセット・マネジメントの前川将吾グローバル・マーケット・ストラテジストはこのガイドラインについて、海外投資家は安倍政権のコーポレートガバナンス改革による自社株買いなど株主還元を評価しているとして「自社株買いの自由度が下がるとイメージが悪化する」と述べた。日銀が上場投資信託(ETF)を買わなくなった状況で自社株買いも規制されれば需給に懸念が出てくるとした。