政府が24日に閣議決定した2022年度予算案は、一般会計歳出総額が107.6兆円となり、10年連続で過去最大を更新した。成長と分配の好循環を強調する岸田政権が策定する初の年度予算で、過去最高の科学技術振興費(約1.4兆円)を計上し、介護・保育などの処遇改善も盛り込んだ。
歳出のうち、社会保障関係費が21年度当初比で4400億円増え、36.27兆円となる。新型コロナウイルス対策予備費は、同額の5兆円を計上した。
歳出 | 22年度 | 21年度当初比 |
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一般歳出 | 67.37兆円 | +4700億円 |
地方交付税交付金 | 15.88兆円 | -700億円 |
国債費 | 24.34兆円 | +5800億円 |
計 | 107.6兆円 | +9900億円 |
少子高齢化が進む中で、「新しい資本主義」においてデジタル投資や科学振興を掲げるも、一般会計の歳出総額の内訳を見ると社会保障と国債関連費用が6割弱を占め、新たな成長投資に費やせる支出の割合は限られている。
鈴木俊一財務相は閣議後会見で、「社会保障の受益と負担のアンバランスという日本の財政が抱える構造的な問題に対して、引き続き全力で取り組んでいくことが重要」だと述べた。
歳入面では、コロナ禍からの回復を反映して、税収は過去最高の65.24兆円に達する見込み。一方、新規国債発行額は6.67兆円減の36.93兆円(赤字国債30.7兆円、建設国債6.3兆円)となった。公債依存度は34.3%。
伊藤忠総研の武田淳チーフエコノミストは、新規国債発行額が減少したことについて、「21年度の補正予算ですでに確保した分がある」ためであり、財政健全化が進んだとは言えないと電話取材で語った。
21年度補正予算を受けて初めて1000兆円を突破する国債残高は22年度末に1026.5兆円となり、対国内総生産(GDP)比は181.8%に上昇する見込み。
岸田文雄首相はコロナ危機を乗り越えるため、「必要な財政支出は躊躇(ちゅうちょ)なく行う」姿勢を示している。経済を立て直した上で「中長期的に財政健全化に取り組む」考えだ。
財政再建を巡っては今年度中に、25年度の基礎的財政収支(PB、プライマリーバランス)の黒字化目標を「再確認」する。鈴木財務相は、コロナ禍の影響を検証しつつ、現時点では「骨太の方針2021に書いてある通り、25年度においてPBの黒字化を目指す」考えであり、見直す必要はないとの認識を示した。
歳入 | 22年度 | 21年度当初比 |
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税収 | 65.24兆円 | +7.79兆円 |
その他収入 | 5.44兆円 | -1300億円 |
新規国債発行 | 36.93兆円 | -6.67兆円 |
新しい資本主義関連の項目
- デジタル、グリーン、量子、AI、宇宙、次世代半導体等の研究開発を推進
- 情報システム関係予算の一括計上などを進めデジタル庁の司令塔機能を強化(4720億円)
- 経済安全保障のため量子暗号通信の研究開発の推進や重要技術の管理体制を強化
- 新型コロナ医療対応等を行う医療機関の看護職、介護、保育、幼児教育などの従事者について給与3%引き上げ
- 成⻑分野を支える人材育成や円滑な労働移動支援へ3年間で4000億円規模の施策パッケージに向けて人への投資を推進(労働保険特別会計1019億円)