【ロンドン時事】ロシアのプーチン大統領が近く、ウクライナ侵攻の位置付けを現在の「特別軍事作戦」から「戦争」へと拡大するとの観測が浮上している。兵力の大量動員を可能にする狙いがあるようだ。ウォレス英国防相は先週、英ラジオに対し、ソ連の対ドイツ戦勝記念日である9日、「プーチン氏がおそらく『ネオナチと戦争状態にあり、ロシア国民の大量動員が必要だ』と宣言するだろう」と述べ、警戒感を示した。
ロシアは2月、ウクライナの非武装化などを理由に、特別軍事作戦の名目で侵攻を開始した。ただ、当初目指した首都キーウ(キエフ)の制圧に失敗。西側情報当局などの間では、プーチン氏がウクライナ東・南部の支配拡大へと重点目標を切り替え、対独戦勝記念日で誇示する「戦果」の獲得に向け、攻勢を強めているとの見方が多い。
一方、プーチン氏の狙いについて、ここに来て分析に変化が生じている。英シンクタンクの王立防衛安全保障研究所(RUSI)は4月下旬にまとめた特別報告で、ロシアは兵力の大幅増強が急務で、そのために予備役の招集や徴集兵の役務期間延長が必要になるとの見方を示した。
これらは政治的に論議を呼びやすいため、戦時体制を敷くことで異論を封じる構えのようだ。報告書は「対独戦勝記念日に『特別軍事作戦』が公式に『戦争』と位置付けられる可能性が一段と高まっているように思える」と解説した。
4月30日付の英紙デーリー・テレグラフがロシアの治安機関に近いジャーナリスト、イリナ・ボロガン氏の話として伝えたところでは、ロシア軍指導部はキーウ攻防敗北への怒りを強めており、報復を念頭に置いた「全面戦争」を宣言するようプーチン氏に圧力をかけているという。同紙は公式に戦争に突入することで、ロシアでの戒厳令布告や、民間企業の国有化など戦時経済体制に移行する可能性を伝えている。