山口県阿武町から誤って振り込まれた4630万円の給付金の一部を別の口座に振り替えて不法に利益を得たとして、町内に住む24歳の住民が電子計算機使用詐欺の疑いで18日夜、逮捕されました。警察によりますと、調べに対し容疑を認め「金はオンラインカジノで使った」などと供述しているということです。

逮捕されたのは山口県阿武町の無職、田口翔容疑者(24)です。

警察によりますと、先月、阿武町から振り込まれた国の臨時特別給付金合わせて4630万円について、誤って入金されたと知りながらスマートフォンでオンライン決済サービスを利用し自分の口座から決済代行業者の口座にこのうち400万円を振り替えて不法に利益を得たとして、電子計算機使用詐欺の疑いが持たれています。

容疑認め「金はオンラインカジノで使った」

調べに対し容疑を認め「金はオンラインカジノで使った」などと供述しているということです。

警察によりますと、田口容疑者の口座に振り込まれた4630万円の全額が別の口座に移されていたということです。

警察はこれまでに押収したスマートフォンを解析するなどして、金の使いみちなどを捜査することにしています。

34回にわたって全額出金

代理人の弁護士によりますと、田口容疑者はこれまでに「振り込まれた金は海外のオンラインカジノで全部使い切った」などと話していたということです。

町から振り込まれた先月8日のうちに金を使い始め、先月18日までの11日間に34回にわたって全額を出金したということです。

出金は1回当たり60万円余りから多い時には400万円で、使用した際に即時に引き落とされる「デビット決済」や複数の決済代行会社を通じて、海外のオンラインカジノで使ったということです。

弁護士によりますと、田口容疑者は「お金を使ってしまったことは大変申し訳ない。少しずつでも返していきたい」と話していたということです。

元同僚「勤務態度は普通」

田口容疑者が勤めていた萩市にあるホームセンターの元同僚は「勤務態度は普通で、無断欠勤をしたことはなかったと思います。勤務中に会話はありましたが、仕事の話ばかりで仕事以外のことはわかりません」と話していました。

容疑者に住宅貸した大家「特に変わった様子はなかった」

阿武町の住宅を容疑者に貸していた大家の男性は「おととしの11月から家を貸していて、いい子だという印象だった。家賃も滞納したことはなく月末までに振り込まれていた。最後に会ったのは先月20日ごろで、あいさつをしたが特に変わった様子はなかった。なぜこのようなことをしたのかと思う」と話していました。

問題の経緯は

山口県北部、人口およそ3100の阿武町。町によりますと、問題は新型コロナの影響で生活が困窮する世帯に10万円を給付する国の臨時特別給付金の振り込みをめぐって起きました。

先月1日。町は給付金の対象となった463世帯の口座情報をフロッピーディスクに入れて銀行に渡し、振り込みの手続きは完了していました。

ところが6日になって町は、本来必要のない振り込み依頼書を誤って銀行に提出。依頼書のいちばん上に記載があった田口容疑者に一括で4630万円が振り込まれる手続きが取られたのです。

銀行から指摘を受けて町が誤りに気付いたのは、その2日後の8日。すでに現金10万円と、4630万円が二重に振り込まれていました。

町はすぐに謝罪するとともに田口容疑者に返還の手続きを行うよう求めました。一度は応じる姿勢を示すも、その後も手続きは進まず、町に対してこう話したといいます。

「お金はすでに動かした。もう戻せない。犯罪になることは分かっている。罪は償う」

町の調査では現金が振り込まれた先月8日から引き出しを始めていて、およそ2週間でほぼ全額が口座からなくなっていたということです。町は今月12日、給付金の返還を求めて裁判を起こし警察も捜査を進めていました。