【パリ時事】イスラム教徒女性向けの全身を覆う水着「ブルキニ」をめぐり、フランス国内で論争が再燃している。発端は、公共プールでの着用を認めた東部グルノーブル市議会の決定。ダルマナン内相が「容認できない挑発」と猛反発し、同市と政府の対立が深まっている。
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ブルキニの着用許可は、環境政党所属のピオル市長が提案。市議会は16日、賛成29、反対27の僅差で承認した。仏メディアによれば、ほとんどの自治体が宗教上ではなく衛生上の理由で公共プールでのブルキニ着用を禁止している。
ピオル氏は採決に先立ち、仏ラジオで「太陽から身を守る水着を着用したり、宗教的信条をプールでも表現したりできるよう求める」と述べていた。
フランスは政教分離を基本原則とする厳格な世俗主義を伝統としてきた。グルノーブル市の決定に対し、ダルマナン内相は「われわれの価値に反する容認できない挑発だ」と非難した。
イスラム過激派による2015年の連続テロで本社が襲撃された風刺週刊紙シャルリエブドの元記者もフィガロ紙に対し、「肌をあらわにしたくない気持ちは分かるが、そうした主張は公共施設で行うべきではない」と強調。「イスラム主義が進めば女性の権利は後退する」と市の対応を批判した。
ブルキニをめぐっては16年、南部ニースでのトラック突入テロを受けてイスラム過激主義への警戒が強まり、一部自治体が海岸での着用を禁止。同年、大統領選へ向けた予備選で返り咲きを狙ったサルコジ氏が全国的な着用禁止を主張するなど論争を巻き起こした。