バイデン大統領が来日、岸田首相との首脳会談を皮切りに昼食会、記者会見、拉致被害者家族との対面、I P E F 発足セレモニー、夕食会など精力的に日程をこなした。メディアを通して様々な情報が伝わってくる。そんな中で気になったのがI P E Fだ。正式には「インド太平洋経済枠組み(Indo-Pacific Economic Framework)」という名称の新経済圏構想を指している。日本を含む13カ国が参加し、きのう正式に発足した。経済連携協定としてはすでにT P PとR C E Pが存在している。T P Pは最初米国が提唱したが、トランプ大統領が就任直後に離脱、その後日本が主導してまとめたものだ。これに対抗する形でR C E Pも誕生した。こちらは中国が主導権を握る枠組み。参加しているのはT P Pが11カ国、R C E Pが15カ国。当初は16カ国だったが、インドが離脱して15カ国になった。両方に参加している国は7カ国。ここにI P E Fが殴り込みをかけた。
13カ国が参加してスタートする。スタートすると言っても形式的なもの。テーマは決まっているが詳細は何も決まっていない。これから決めていく。柱は4つ。①サプライチェーン②クリーンエネルギー③脱炭素・インフラ④税制・反汚職、公正かつ強靱(きょうじん)な貿易。どうして「反汚職」が入っているのだろう。経済活動には贈収賄がつきまとう。バイデン氏はクリーンを標榜する民主党の大統領だ。公正な競争を求めてこの項目が入っているのだろう、最初はそう思った。だが、実態はちがうようだ。NHKによると「アメリカはこの4分野での連携を強化するとしていますが、最大の目的は、不公正な慣行でビジネスを拡大していると問題視する中国へのけん制です」と解説している。①〜③はとってつけたようなテーマ。体裁を整えただけで、米国の本心は④にある。かくしてI P E Fは中国に対抗する枠組みとなる。
そもそもI P E Fはいつから議論が始まったのだろうか。NHKによると「(バイデン大統領は)2021年10月の東アジアサミットで初めて言及し、その後、外交政策の柱となる『インド太平洋戦略』の中で、戦略を実行する具体策の一つとして打ち出しました」とある。アジア重視を掲げるバイデン大統領だが、手がかりとなるものがない。T P Pに復帰すればいいのだが民主党、共和党とも反対しており、T P Pへの復帰は現時点では絶望的。中国主導のR C E Pには元々参加する意思がない。となれば新しい枠組みをつくるしかない。というわけでI P E Fが誕生した。素人の推測だが、当たらずといえども遠からずか。裏で日本が多大な貢献をした。バイデン大統領の表情がやけに明るかったが、その謎が解けた気がする。それにしてもスッキリしない構想だ。台湾有事の軍事戦略と同様で、バイデン大統領の手法には“常に“曖昧さ”がつきまとう。
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