ロシアによるウクライナに対する軍事侵攻が続いています。
ウクライナの各地でロシア軍とウクライナ軍が戦闘を続けていて、大勢の市民が国外へ避難しています。戦闘の状況や関係各国の外交などウクライナ情勢をめぐる9日(日本時間)の動きを随時更新でお伝えします。
(日本とウクライナ、ロシアのモスクワとは6時間の時差があります)
東部でロシア軍の砲撃拡大
ウクライナ軍の参謀本部は9日、ロシア軍が、東部ルハンシク州で最大の激戦地となっているセベロドネツクや、川を挟んで対岸にあるリシチャンシクなどに向けて砲撃を強めていると発表し「周辺の地域では、民間インフラが破壊されている」と非難しました。
攻勢を一段と強めるロシア軍に対してウクライナ軍は、セベロドネツクで市街戦ののち、後退を余儀なくされ、窒素肥料などを作る化学工場を拠点に徹底して反撃する構えです。
さらに、ルハンシク州に隣接するドネツク州でも、ロシア軍の砲撃が強まっています。ウクライナ内務省は、バフムトで、学校などが破壊された映像を公開し「400人以上の子どもたちが通っていた」と攻撃を非難しました。
ウクライナ軍によりますと、ドネツク州のほかの都市でもりゅう弾砲やミサイルによる攻撃が相次ぎ、ロシア軍は、引き続き、東部2州の掌握を目指しているとみられ、これに対してウクライナ側は、欧米からのいっそうの軍事支援を受けながら反撃を強めるとみられます。
アイルランドの建材メーカー 280億円余を投資
ロシアの軍事侵攻によって被害を受けたウクライナの復興支援のため、アイルランドの建材メーカーが2億ユーロ、日本円で280億円余りを投資する計画を明らかにし、ウクライナ外務省は歓迎する声明を発表しました。
声明によりますと、ウクライナへの投資計画を明らかにしたのは、世界におよそ200の製造施設を持つアイルランドの建材メーカー「キングスパン」で、今後5年の間に、ウクライナ国内に建築技術に関する施設を完成させることを目指すということです。
ルハンシク州知事 遺体収容すらできない過酷な状況
ロシア軍が攻勢を強めているウクライナ東部ルハンシク州のハイダイ知事が9日、NHKのオンラインインタビューに応じ、ロシア側は学校や病院などを無差別に砲撃しているとした上で州内の死者の数は数千人にのぼると推測され、遺体の収容すらできない過酷な状況に陥っていることを明らかにしました。
ハイダイ知事は「ロシア政府はウクライナ側が拠点としているセベロドネツクを掌握したとしているが、事実ではなく今も激しい戦闘は続いている」と述べました。
その上で、今月12日がロシアで国の成立を祝う記念日になっていることに触れ「ロシア側はいつも何かしらの記念日に勝利を結びつけたがるが、現時点ではウクライナ軍が守りきれており 数日のうちにセベロドネツク全域が掌握されることはないと確信している」と述べ、欧米からの武器が到着するのを待って反撃に転じたいという考えを示しました。
ロシア 掌握主張の地域とクリミアの貨物輸送を開始か
ロシアのショイグ国防相は7日、国防省で行われた会議の中で、
▽ロシア本土と、
▽ロシアが掌握したと主張するウクライナの地域、
▽8年前に一方的に併合したクリミアとを結ぶ鉄道の運行の条件が整ったと発表しました。
鉄道網はおよそ1200キロにおよび、すでに
▽東部ドネツク州の要衝マリウポリや
▽南東部ザポリージャ州のベルジャンシク、
▽それに南部ヘルソン州への貨物輸送を開始したとしています。
ゼレンスキー大統領「この戦争を通じて最も困難」
ウクライナのゼレンスキー大統領は8日、新たな動画を公開し、セベロドネツクについて「非常に残酷な戦いであり、非常に厳しい、おそらくこの戦争を通じて最も困難なものの1つだ」と述べたうえで「私たちは自分たちの陣地を守り敵に損失を与えている」とし、ロシア軍に抵抗する姿勢を改めて強調しました。
プーチン大統領の側近がマリウポリ訪れる
親ロシア派の武装勢力の指導者プシリン氏が8日、SNSで動画を公開し、プーチン大統領の側近の1人、大統領府のキリエンコ第1副長官がウクライナ東部ドネツク州のマリウポリを訪れたことを明らかにしました。
キリエンコ氏は、ロシアによる軍事侵攻を支持する象徴として利用される「Z」マークがついた車で移動しまちの再建に携わっているとするロシアの建設関係者と会ったほか学校などを訪問したとしています。
ロシア軍が掌握したとする地域への支援を強調することでロシアによる支配を誇示する狙いがあるものとみられます。
ルハンシク州知事 「地域の90%がロシア軍の占領下に」
ルハンシク州のガイダイ知事は8日、SNSへの投稿で「ロシア軍が無差別に砲撃を続けていて、住宅地での被害が甚大だ。地域の90%がロシア軍の占領下にある」と述べ、苦戦を強いられていることを明らかにしました
東部でロシア軍が攻勢強める
ロシア軍はウクライナ東部のルハンシク州で攻勢を強め、ウクライナ軍は苦戦を強いられています。ウクライナ国防省の報道官は8日、ルハンシク州でウクライナ側が拠点とするセベロドネツクの戦況について「最も激しい戦闘が行われている。敵は装備も人員も惜しもうとしない」と指摘しました。
またルハンシク州のガイダイ知事は8日、ウクライナメディアの取材に対して「セベロドネツクの状況は厳しい。2日前、特殊部隊がほぼ半分を奪還したが、その後、空爆と砲撃が激しさを増し、われわれは郊外へ追いやられた」と述べ、苦戦を強いられていることを認めました。
ウクライナ側は、ロシア軍がセベロドネツクを今月10日までに掌握することを目指しているとみて、危機感を強めています。
⇒「ウクライナ東部でロシア軍が攻勢 南部では守勢に回る戦線も」詳細記事はこちら
南部では守勢に回る戦線も
ロシア軍が東部に戦力を集中させたことで、南部では守勢に回る場面もみられます。
ウクライナの通信社は8日、親ロシア派の武装勢力の元幹部の話として、ロシア軍が南部のへルソン州とミコライウ州の戦線で、部隊を数キロ後退させているなどと伝えました。
イギリスの国防省は8日の戦況分析で「ロシア軍は東部に戦力を集中させているが、その周辺では守勢に立たされている。南部へルソン州ではウクライナ軍が反撃に転じ、主要河川の東岸で陣地を奪還した」と指摘しています。
マリウポリで投降 兵士1000人以上がロシアに移送
ロシア国営のタス通信は8日、ロシアの捜査当局者の話として、ウクライナ東部のマリウポリで先月投降しロシア軍の捕虜となったウクライナ側の兵士1000人以上がロシアに移送されたと伝えました。
いずれもマリウポリの最後の激戦地となった「アゾフスターリ製鉄所」でロシア軍に抵抗していた兵士らで、ウクライナ軍や準軍事組織「アゾフ大隊」の兵士のほか、外国人のよう兵も含まれるということで、移送先で当局の尋問を受ける見通しです。
タス通信は「アゾフスターリ製鉄所」で捕虜となったウクライナ側の兵士は、2400人以上にのぼるとしています。
またロシアとウクライナは、戦死した相手側の兵士の遺体を南東部のザポリージャ州で互いに引き渡し、双方あわせて320人の遺体が遺族のもとに戻されることになりました。
「アゾフ大隊」の兵士の遺族などでつくる団体によりますと、ウクライナ側に返される160人の遺体のうち、およそ3分の1が「アゾフ大隊」の兵士だったということです。
出荷できない小麦 さらに増えるおそれ
農家や輸出業者などで作るウクライナ穀物協会のミコラ・ゴルバチョフ会長は、7月、小麦の収穫がピークを迎えるため、黒海の港の近くや穀倉地帯に点在する穀物倉庫が不足し、出荷できない小麦がさらに増えるおそれがあるとしています。
また、侵攻前は輸出用の穀物の98%が海上輸送されていたとしたうえで、一部を隣国のルーマニアやポーランドに鉄道を使って運び出してから港に運ぶ代替手段については、ウクライナとは線路の幅が異なるため、輸出量の大幅な増加にはつながらないと指摘しました。
さらに、こうした国の港について「ウクライナの穀物のために作られているわけではなく、クレーンなどの設備が整っていない。大量の穀物を受け入れる準備はできていない」と指摘しています。
ゴルバチョフ会長は「1つの国が穀物の供給網を破壊しているのを私たちは目の当たりにしている。解決のためには港の封鎖を解くしかない。ソマリア沖の海賊対策として各国海軍が艦船を派遣した経験は、ウクライナにもあてはまる」としたうえで、海上輸送のための国際的な協力の枠組みが必要だと強調しました。
国連が報告書 「世界中で16億人が影響」
国連は8日、ウクライナ侵攻についての報告書を発表し、穀物価格の上昇などによって世界中で16億人が影響を受けていると指摘しました。
グテーレス事務総長は会見で「戦争が食料安全保障、エネルギー、金融に与える影響は深刻さを増している」と指摘したうえで「世界中の人々にとって、この戦争はほかの危機とあわさって、前例のない飢餓と貧困の波を引き起こすおそれがある」と述べ、停戦の必要性を訴えました。
ロシア 物価の上昇傾向続く
ウクライナへの軍事侵攻をめぐり厳しい経済制裁が科されているロシアでは、物価の上昇傾向が続いています。
ロシアの統計庁が8日発表した先月の消費者物価指数は、前の年の同じ月と比べて17.1%の上昇となりました。
分野別で見ると、食品類は20.05%の上昇で、市民生活への影響が続いています。
一方、4月の消費者物価指数は、前の年の同じ月と比べて17.83%の上昇となっていて、ロイター通信は「インフレの上昇傾向は鈍化している」とも指摘しています。
親ロシア派武装勢力への寄付呼びかけ 物資不足の可能性も
ウクライナ東部でロシア軍と連携する親ロシア派の武装勢力に対する寄付を呼びかけるウェブサイトが6日、ロシアで立ち上がりました。
ウェブサイトを運営するのは、当時首相だったプーチン氏の呼びかけで11年前に設立されたロシアの市民団体「全ロシア国民戦線」です。
集めた寄付金は、ウクライナ東部ドネツク州とルハンシク州の親ロシア派の武装勢力が戦闘で使う装備品などの調達にあてられるとしています。
「全ロシア国民戦線」は、不足しているものとしてヘルメットや防弾チョッキ、それに医薬品などをあげており、軍事侵攻が長期化し、一部で苦戦も伝えられるなか、親ロシア派の武装勢力には十分な装備が行き渡らず、物資不足に陥っている可能性もあるとみられます。