円相場が急落している。朝日新聞デジタルによると、きのうは一時、1ドル=135円20銭台をつけた。これは1998年10月以来、23年8カ月ぶりの円安水準だという。1998年といえば日本はバブル崩壊の後遺症で長銀や日債銀といった長期信用銀行が倒産、金融システムが崩壊の危機に直面していた時だ。これと同じことがいま、目の前で起ころうとしている。だが、原因はまったく違う。23年前に標的となった金融システムは今回健全に機能している。にもかかわらず円相場が急落した。どこまで落ち込むかわからない。一説には150円説もある。そこで止まるのか、懸念は広がりこそすれ収まることはない。原因は日米の金利差だと識者は指摘する。果たしてそうだろうか。個人的にはバブル崩壊以降続いた経済政策の失敗に起因している、そんな気がして仕方がない。円安は日本の弱体化を象徴しているのでは・・・。
主要国がゼロ金利政策からの脱却を目指して試行錯誤していたのはついこの間のことだ。その努力はコロナのパンデミックによってあっけなく崩壊した。財政資金が間断なく注ぎ込まれ、世界中のマーケットを過剰流動性が覆い尽くした。こうなればパンデミックからエンデミックへのちょっとした変化で需要は猛烈な勢いで回復する。だが、サプライチェーンにボトルネックを抱えたままでは、供給は需要に追いつかない。ここにジワリとインフレの波が忍び寄る。そこにプーチンのウクライナ侵略だ。戦争という物理的な破壊活動が経済基盤を打ち壊す。農産品に肥料や飼料、鉱物資源にエネルギー、半導体などあらゆるものが不足する。金利が上がるのは当然だ。世界中の中央銀行が今度は金融引き締めに一斉に動き始める。だが、日本はこの動きに追随することを拒み続けている。黒田日銀総裁の異次元緩和政策がいまだに経済政策の柱になっているからだ。
異次元緩和は生活者を豊かにしたのだろうか。10年前にアベノミクスの一環として導入した時にはそれなりの効果があった。だが、それだけ。それでもまだ金看板として通用している。そして行き着いた先はが「家計はインフレを許容している」発言だ。岸田政権は「資産所得倍増計画」を閣議決定している。資産所得どころか所得そのものが減っているのだ。毎日新聞(Web版)には生活者の怒りの声が載っている。主婦の福地せいこさん(82)、黒田氏の発言に対して「自分たちは良い生活をしているのだろうが、新型コロナで生活に困っている人もいる。考えて、ものを言ってほしい」。政府、日銀はいま何をすべきなのか。家計、すなわち生活者の生活を立て直すべきだ。バブル崩壊のあと政府や日銀は、家計よりも企業、庶民の生活よりも財政再建を優先してきた。その象徴が消費税だろう。失政が招いた日本弱体化、そのツケがいま超円安となって顕在化しはじめている。
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