ウクライナ戦争で明らかになった分断の構図、これをなんと呼べばいいのだろうか。N A T O首脳会議に対抗してプーチンは旧ソ連邦を構成した友好国を訪問、首脳会談を行っている。強権国家側の結束強化を誇示しようというわけだ。G7に対抗したB R I C S首脳会議、ダボス会議に対抗したサンクトペテルブルクでの経済フォーラム。同フォーラムでプーチンは「(西側陣営の)経済制裁は失敗した」と豪語した。B R I C Sにはイランとアルゼンチンが加盟を申請した。両陣営が混在するG20の総会にプーチンは参加を表明している。かつての冷戦よりも今回の陣取合戦の方が厳しい印象を受ける。もちろん両陣営を股にかける国々も多数存在している。いまのところ数的優位は西側にある。だが中国がロシア側に入っている関係で、人口的には強権国家陣営に分がありそうだ。
経済の成長率は強権国側が有利か。二股陣営が最も気にしている点もここだろう。経済的に有利なのはどっちだ。戦争という悲惨な状況の中でも己の利益の最大化を目指す。これは人類の如何ともし難い遺伝子か。縁の切れ目より常に金の切れ目が気になるのだ。そんな中、注目すべき記事があった。ロシア中央銀行のナビウリナ総裁は29日、「SWIFTの国内代替手段に12カ国・70行の海外金融機関が加盟した」と表明したというのだ。ロイター通信によると、国際決済の代替手段としてロシア中銀が開発した独自のシステム「SPFS」に52行の海外金融機関が加盟したという。これは究極の制裁破りだ。ミサイルに対抗するはずのロシア金融機関のSWIFTからの排除、意図も簡単に破られてしまった。
だが、当面は恐れずに足らず。ロイターによると、SPFSは国際的な接続性を欠いているほか、SWIFTが毎日24時間稼働しているのに対し、SPFSは平日の営業時間内しか稼働しない。また、SPFSは送受信可能なメッセージのサイズに制限があり、複雑な取引に対応できない恐れがあるのだそうだ。当面はいいとしても、時間をかければロシアも追いつくだろう。大義も正義もない犯罪者(ロシア)にとって、この戦争が長期戦になればなるほど状況は有利になるかもしれない。システムだけではない。ロシアには石油も天然ガスも農産物も潤沢にある。耐乏生活にもなれている。中国に加えてインドがこちらの陣営に加われば、人口的にも西側陣営を大幅に上回る。さてどうする。西側にとっては短期的な戦術(武器供与)以上に、強権国家を抑え込む長期的な戦略が必要になるだろう。
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