気になるのはウクライナ戦争だけではない。米国で相次ぐ銃による無差別殺人事件の発生、これまで無風と見られていたI T企業に次々と労組が誕生したという事実も意外だった。これは堅調な経済の陰に隠れていた労働者の反乱のはじまりだろう。連邦最高裁は妊娠中絶を憲法違反と断定、ついでにニューヨーク市の銃規制にも憲法違反の判決を下した。民主党と共和党に分断された米国は、妊娠中絶の是非をめぐって賛成派、反対派の溝が一段と広がる事態になっている。南米大陸に目を転じればドミノ倒しのように左翼政権が誕生している。親米だったコロンビアで19日、大統領選挙の決選投票が行われ、急進左派のペトロ氏が当選した。ペトロ氏は左翼ゲリラに身を投じていた経歴を持つ。ペトロ政権で南米大陸は反米色が一段と強まるだろう。
英国ではスコットランドのスタージョン首相が来年10月19日に、独立の是非を問う2度目の住民投票を行う意向を示している。英国のE U離脱騒動がようやく一息ついたと思ったら、今度は足元のスコットランドで独立話しが持ち上がろうとしている。世界を震撼とさせる紛争や事件、事故の類は数え上げたらキリがない。カーボンニュートラルに向けた地球環境防衛の取り組みは一体どこに消えてしまったのだろうか。協調と共闘はあっというまに跡形もなく消え去り、対立、分裂、分断はエスカレートする一方だ。ウクライナ戦争に限って見ても事態は深刻化するばかり。休戦や停戦の兆しは一向に見えてこない。東部戦線で完全勝利の報告を受けたプーチンは、ロシア軍を慰労する一方で、ますますの戦力強化を指示している。
プーチンのウクライナ侵攻は、ロシアの安全保障並びに親ロシア派の解放が戦争の大義になっている。だが、その実態は冷戦に敗れたロシアの失地回復が本音なのだろう。だが、安全保障の確保を目指した軍事力の行使が、NATOの拡大強化によって逆にロシアの安全を脅かす事態になっている。なんとも皮肉な結果だ。だがプーチンの狂気はそんなことに怖じることはない。今朝の朝日新聞にロシアを代表する作家、ミハイル・シーシキン氏が寄稿している。プーチンを「僭称者」(皇位を勝手に名乗る人物)と断罪し、「次のプーチンを生まぬ備えロシアにあるか」と自国の民に問いかけている。対立、分裂、分断がエスカレートするいまの世界。ロシアに限らず分断そのものが「僭称者」を生み出す土壌になっているような気がする。
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