KHERSON, UKRAINE – JULY 15: Ukrainian artillerymen rest after their duties at the frontline in Kherson, Ukraine on July 15, 2022. Ukrainian artillerymen in the military assembly center check the weapons and special equipment to make them ready before they go to their duties at the frontline in Kherson. (Photo by Metin Aktas/Anadolu Agency via Getty Images)

ウクライナでの戦争が、新たな段階に入りつつある可能性がある。米国が供給した長距離ロケットシステムでウクライナ東部ドンバス地方でのロシア軍進軍が阻まれ、ウクライナには反転攻勢に出る機会が生まれている。

  英秘密情報部(MI6)のムーア長官は先週、ロシア軍が「失速」しているとし、「チャンス」が生まれていると指摘した。ただ、ウクライナがこれを生かせるかどうかは全く明確ではない。

  戦闘・非戦闘の両面で、ウクライナ政府にとって攻勢に出る理由は強まっている。死傷率の低下に加え、ロシアが占領地域の支配を固める動きを最近見せていること、ウクライナ経済を回復させる必要性、世界的な景気落ち込みでウクライナに協力する各国政府に戦争終結の圧力がかかる恐れなどが理由だ。

  米シンクタンク、戦争研究所(ISW)は23日の日次リポートで、ウクライナ軍は南部ヘルソン州ですでに反転攻勢を開始した可能性があると指摘。今月15日以降にドンバス地方の主要な前線でロシア軍の砲撃が著しく減ったのは高機動ロケット砲システム「HIMARS」の効果だとし、HIMARSがロシア軍の前線に武器を供給していた数十の兵器庫を破壊したと分析した。

  ISWは25日、ヘルソン州のロシア軍とドニエプル川東岸の供給ラインを結ぶ全ての橋をウクライナ軍が損傷させたとも報告した。

  ゼレンスキー大統領は21日、安全保障担当幹部らとの会合後、「前線で軍を進軍させ、占領者に新たに重大な損失を負わせる大きな見込みがある」と述べた。さらにウォールストリート・ジャーナル(WSJ)が22日に掲載したインタビューで同大統領は、5-6月には1日100-200人に上っていた戦場での死傷者数が最近は30人前後にまで減少したと説明。ロシアに領土の割譲を認める休戦協定は結ばないと、あらためて強調した。

  英スコットランドのセントアンドルーズ大学で戦略研究を専門とするフィリップス・オブライエン教授は、戦争が新たな段階に入りつつあることをこれら全てが示唆していると指摘。ロシア軍が電撃的にキーウ占領を目指し失敗した第1段階、勝利への道を進もうと東部の一部で撤退したのを第2段階と位置付け、「ドンバス地方でロシア軍の軍事力低下が続き、基本的に戦線が膠着(こうちゃく)するなら、ウクライナ軍による撃退は可能になるのかが問われることになる」と語った。

  同盟国から弾薬や装甲車両、対空システムなどの供給をまず確保することなしにロシアの支配地域を奪還できる能力がウクライナ軍にあるのかは判然としない。ロシアの侵攻が2月24日に始まって以来、ウクライナは数多くの反撃を試みてきたが、総じて小規模にとどまっている。

  反撃が失敗すれば余力に乏しいウクライナへの打撃は大きく、ロシアの新たな攻撃にさらされやすくなる恐れもあると、欧州の防衛担当当局者は述べた。

原題:Long-Range Guns Given to Ukraine Open Door to New Phase of War(抜粋)