[ジャクソンホール(米ワイオミング州)26日 ロイター] – 米連邦準備理事会(FRB)のパウエル議長は26日、成長鈍化などの「痛み」を伴ったとしても、インフレが抑制されるまで「当面」金融引き締めが必要という見解を示した。
パウエル議長は米ワイオミング州ジャクソンホールで開かれた経済シンポジウム(ジャクソンホール会議)で講演し、「インフレを低下させるために、トレンドを下回る成長が一定期間持続する必要がある公算が大きい。労働市況も軟化する可能性が非常に高い。金利上昇や成長鈍化、労働市場の軟化はインフレを低下させるが、家計や企業に痛みをもたらすだろう」と述べた。
残念ながらインフレ抑制にはこうしたコストが伴うとしつつも、「物価安定の回復失敗はより大きな痛みを意味する」と強調。さらに、痛みが増大しても、FRBが早期に緩和にシフトすることを想定すべきではないとし、市場で台頭しつつある来年の利下げ予想をけん制した。
ターミナルレート(利上げの最終地点)への言及は避け、金利は必要に応じ上昇するという認識を示すにとどめた。その上で「目標を達成するまで続けなければならない」とし、歴史は時期尚早な政策緩和に警鐘を鳴らしていると指摘した。
9月の米連邦公開市場委員会(FOMC)の利上げ幅については、「入手されるデータ全体と見通しの動向次第」と述べ、明確な手掛かりは示さなかった。
最近の米インフレ指標が鈍化していることについては、「単月の改善はインフレが低下していると確信するにはほど遠い」とし、他の指標は労働市場における「堅調な基調的な勢い」を示しているほか、求人数が失業者数をはるかに上回っており、雇用市場の「バランスは明らかに崩れている」という認識を示した。
朝方発表された7月の米個人消費支出(PCE)価格指数は、前年同月比6.3%上昇と、前月の6.8%から伸びが鈍化。先週発表された7月の消費者物価指数(CPI)も前年同月比8.5%上昇と、伸びは約40年ぶりの伸びとなった6月の9.1%から鈍化した。
カーソン・グループのチーフマーケットストラテジスト、ライアン・デトリック氏は「パウエル議長が家計の痛みを認めたことは投資家にとりサプライズで、インフレ抑制に向けた利上げにいかに真剣であるかを印象付けた」とし、「少なくとも現時点でハト派的な政策転換への期待を後退させた」と述べた。
パウエル議長の講演を受け、金利先物市場は低下し、9月FOMCでの0.75%ポイント利上げ予想が強まった。しかし、フェデラルファンド(FF)金利が来年3月までに3.75─4%に上昇し、2023年末までに約40ベーシスポイント(bp)低下するという見方を引き続き織り込んでいる。