欧州各国がロシア産天然ガスへの依存脱却を進める中、ロシアが余った天然ガスを焼却処分している可能性が浮上している。フィンランド国境に近く、ロシア北西部サンクトペテルブルクに近い都市ポルトバヤで6月以降、天然ガスを燃やしたとみられる炎が近隣住民に目撃されたり、人工衛星で確認されたりしている。英BBCが26日に報じた。
炎が確認されているのは、ロシアとドイツを結ぶ天然ガスパイプライン「ノルド・ストリーム」のロシア側施設付近。国境を挟んでフィンランド側の住民が6月以降、空高く上がる炎を目撃しているほか、施設から膨大な熱が放出されているのを複数の研究者が確認した。ノルウェーの民間調査機関「ライスタッド・エナジー」は、日量434万立方メートルのガスが燃やされていると分析している。1日に燃やされているガスを金額に換算すると1000万ドル(13億7450万円)に上るとの見方もある。
専門家は、状況を踏まえると炎は事故ではなく、意図的に燃焼させた可能性が高いとみている。ドイツの駐英大使はBBCに対し、「欧州各国が天然ガスのロシア依存から脱却するため努力した効果が出ている。ロシア側は(天然ガスの)売り先を失って燃やしているのだ」と推測した。
専門家の間では、ガスの需要が減っても施設を一度停止して再稼働するより、ガスの輸送を続けた方がコストが少なくて済むとの判断や、欧米の経済制裁で施設に必要な部品の調達が難しくなったため燃やさざるを得なくなったのではないかなどの見方が出ている。
一方、環境への悪影響が懸念されている。天然ガスを燃やした際に発生する二酸化炭素が地球温暖化を進めるほか、同時に排出される黒色炭素の影響で、北極の氷が解ける可能性も指摘されている。【ブリュッセル宮川裕章】