【英財政政策関連】

[ロンドン 30日 ロイター] – 大手格付け会社スタンダード・アンド・プアーズ(S&P)は30日、トラス英政権が発表した大型減税策は債務を拡大させるとして、英国国債の格付け(AA)の見通しを「安定的」から「ネガティブ」に変更した。

クワーテング財務相は9月23日に約450億ポンド(500億ドル)規模の減税および国債増発などの財政計画を発表。ポンドや英国債が急落し、イングランド銀行(英中央銀行)は量的縮小措置を急きょ延期し、市場安定化に向け時限的な長期国債買い入れ措置を導入した。

S&Pの格付けは、ムーディーズやフィッチより1ランク高い。

S&Pは、英国の公的債務の対国内総生産(GDP)比率が2023年から低下するとの従来予想を修正し増加傾向にあると指摘した。

その上で「当社の最新の財政予測では、たとえば経済環境のさらなる悪化により英国の経済成長が減速した場合や、市場動向や金融政策引き締めにより政府の借り入れコストが予想以上に上昇した場合には、リスクが増大する」とした。

英経済が今後数四半期でテクニカルリセッション(2四半期連続のマイナス成長)に陥り23年はGDPが0.5%縮小する予想した。

トラス政権は減税のほか、移民政策や規制など中長期的な課題で構造改革を進めることが成長を押し上げると想定している。S&Pはそのような恩恵は短期的には控えめなものにとどまるとみている。

「政府が最終的に財政再建策を導入して債務を減少軌道に乗せる予定なのか現時点で不明で、発表された計画は借り入れで賄うと想定している」とし、23年から25年の財政赤字予想(年平均、GDP比)を5.5%(従来予想は3%)に上方修正し、公的債務(GDP比)は25年までに97%に上昇すると予想した。

ムーディーズは28日、財源の裏付けのない減税は財政赤字拡大と金利上昇を引き起こし、投資家の信頼を脅かす恐れがあるとして「クレジットネガティブ(信用に悪影響を及ぼす)」と判定した。

DBRSモーニングスターは30日、減税計画に起因する財政悪化がいずれ格付けの引き下げ方向のリスクになる可能性があると指摘した。同社の英国の格付けは「AA(ハイ)、安定的」。

トラス首相とクワーテング財務相は30日、11月23日に発表する「中期財政計画」と予算責任局(OBR)の経済予測を巡り、OBRのリチャード・ヒューズ局長と会談した。市場の懸念を払拭するため「中期財政計画」の公表を前倒しすべきとの声が出ているが、公表時期は従来予定通りとした。