• 北京の四通橋に13日、習氏に抗議し「ゼロコロナ」を批判する横断幕
  • 「橋」や「勇気」といった単語さえも制限の対象に

中国共産党の習近平総書記(国家主席)を批判する横断幕が北京市内で白昼堂々と掲げられたことで、当局はソーシャルメディア上で「北京」という言葉の検索を制限するという極端な検閲措置を講じている。16日には習氏の3期目入りが確定するとみられる党大会が市内で開幕する。

  北京北西部の四通橋に13日掲げられた横断幕は習氏を非難。厳格なロックダウン(都市封鎖)や大規模な集団検査で徹底的に新型コロナウイルスを封じ込める「ゼロコロナ」政策を批判した。2枚の横断幕を撮影した写真と動画がソーシャルメディアに拡散した。

四通橋に近い交差点(10月13日)Photographer: Dake Kang/AP Phtos

  一枚の横断幕には「PCR検査ではなく食べ物を、ロックダウンや管理ではなく自由を、うそではなく敬意を、文革ではなく改革を、領袖ではなく選挙を求めている」などと記されていた。文革は毛沢東初代国家主席が主導した「文化大革命」、領袖は共産党が毛氏に用いていた呼称だ。もう一枚の横断幕では、学校のボイコットとストライキが呼び掛けられていた。

  中国国営メディアは習氏を「人民の領袖」と表現することがあり、習氏がこの呼称を正式なものにしようとするのではないかとの観測が広がっている。

  中国は厳しいインターネット検閲で知られる。この出来事に関係する投稿は14日までにほぼ削除された。13日は中国の主要ソーシャルメディア上で「四通橋」や「勇敢な男」といった言葉が規制されていたが、14日までに「橋」や「勇気」といった漠然とした言葉までもが規制対象となった。横断幕に関与したと推測されている人物の名前も検閲対象だ。

  5年に一度の共産党大会の開幕を目前に控え大会参加者が全国から北京に到着し始めているこの時期に、中国版ツイッターと呼ばれる微博(ウェイボ)では、「北京」という言葉さえ厳しく制限され、検索結果は国営メディアまたは政府機関に属する認証済みアカウントからの投稿に限定されている。

  北京市の報道担当室は13日、コメント要請に応じなかった。中国外務省の毛寧報道官は北京で14日に開いた定例記者会見で、そうした抗議は承知していないと述べた。

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  米ニュージャージー州を拠点とする中国人弁護士で人権活動家のテン・ビアオ氏は横断幕が掲げられたことについて、「極めて勇敢」な行動だと述べ、「多くの人々が習近平という新しい独裁者の下で幸せではないことを示している」と指摘。 習氏は「これを大きな屈辱と捉えるだろう。隠すことはできない」と話した。

  監視カメラが捉えた抗議活動は、習氏に対する市民の不満が噴出していることを露呈させた。ここ数年、習氏に対する抗議が散発的に行われており、2018年に「独裁」に反対だとして習氏を描いた看板にインクをかけた女性は、精神障害治療の施設に収容された。

  微博とメッセージアプリ、微信(ウィーチャット)のユーザーは14日、横断幕の抗議活動を写した写真を共有したアカウントが削除もしくはコンテンツ投稿ができないようになっていることを明らかにしている。

  ツイッターユーザーの1人は、「それを見たと微博に投稿したら、60日間の停止となった」とコメント。別のユーザーは「何人かの友人が四通橋の写真や動画を投稿した後、微信のアカウントが停止された」と明かした。このユーザーは今回の抗議行動に触れずに検閲について不満を漏らしただけの友人がソーシャルメディアアカウントを14日間停止されたと説明。そのソーシャルメディアはさほど有名でない豆瓣だという。

  音楽ストリーミングサービスのQQミュージックは14日時点で、北京の音楽グループ「ミスター・グレイスレス(Mr. Graceless)」の楽曲「四通橋」の配信を取りやめている。

原題:China Censors ‘Beijing’ After Rare Xi Protest Before Meeting (1)(抜粋)