政府・日銀がまたまた為替市場に介入したようだ。実施日は21日(金)と24日(月)の2回。いずれも覆面介入というやつで介入したか、しないか、政府は公にしていない。頭隠して尻隠さず。市場では介入規模の推計が盛んに行われている。21日分が約5兆5000億円、24日分が8000億円から9000億円。9月の介入ですでに2兆8000億円分の円を買い上げているから、外為会計はドルが減ってその分円が増えているはずだ。介入の結果はどうだったか。いずれも150円台乗せを防ぐための介入。今現在円相場は1ドル=148円台(26日午前現在)で推移している。政府・日銀は目の敵にしている投機筋を表面的にはやっつけたように見える。だが現実は全然違う。米国の経済統計が景気後退のシグナルを発した結果、リセッションを警戒した投資家、日本政府に言わせれば投機家ということになるのだろうが、あるいは為替ディーラーによる正当なドル売りが活発化、つれて円も高くなっている。
為替問題担当である鈴木財務大臣や神田真人財務官は内心、市場介入の勝利とほくそ笑んでいるかもしれない。そう思うのは勝手だが、現実は市場関係者の大半がインフレ抑制策の度がすぎて米国経済がリセッションに陥るのではないか、心配し始めたというのが目先的なドル安の主たる要因のようだ。パウエルFRB議長の金融引き締め策が効果を発揮し始めたということだろう。市場介入には一時的な効果はあるものの、流れを一変させるほどのパワーはない。そんなことは財務省も先刻承知の上で介入していると思うが、なんとなく知恵がなさすぎる。介入で投資家(日本政府の言う投機家)にほんの少し痛手を負わせたところで、その傷はすぐに癒えてしまう。円安で苦しむ輸入業者の深い傷は言えることがない。何の効果もない市場介入に政府はどうしてそんなにこだわるのか。市場の推計が正しいとすれば政府はすでに10兆円近いドル資金を使ったことになる。
どうせやるなら、もっと賢い介入の仕方はないのだろうか。円安の背景にあるのは日米金利差だけではない。日本経済の低迷に伴う“日本売り”という要因も内在している。経済低迷の最大の要因は需要不足にある。これを解消するために国民1人当たり10万円分のドルを現金給付するのはどうだろうか。コロナ禍で実施された特別定額給付金と同じだ。あのスキームをドルで実施するのだ。給付を受けた個人は、これを使うためにはドルを売って円を買わなければならない。1億2000万人によるドル売り=円買いが始まる。市場介入と違ってこのドル売りはバラバラと散発的に起こるだろう。為替ディーラーから見ればドル売りの不安材料だ。こちらは金利差と無関係に起こる。投資家もディーラーも安心して円を売れなくなる。需要回復にも役立血、日本経済の活性化にもつながる。必要な資金規模は円換算で12兆円にすぎない。家計になんの恩恵をもたらさない政府の10兆円介入よりはマシだろう。
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