[ブラジリア/サンパウロ 1日 ロイター] – 10月30日のブラジル大統領選決選投票で敗北が決まった現職の右派ボルソナロ大統領は1日に演説し、自身に投票した有権者に感謝の意を表明した。さらに正式な敗北宣言は拒否しつつも憲法の規定は尊重すると繰り返し、来年1月1日の政権移行に応じる姿勢を示唆した。

側近らは既に、ルラ氏陣営と政権移行の協議を開始。ノゲイラ大統領首席補佐官はボルソナロ氏の演説後、ボルソナロ氏からルラ氏側の代表者とともに政権移行手続きを始めることを認められたと明かした。

得票数確定後にボルソナロ氏が公式の発言を行ったのは今回が初めて。これまで同氏が沈黙を守っていた間、同氏支持者による道路封鎖などの選挙結果への抗議行動が発生し、勝利したルラ元大統領の政権復帰を阻むため軍にクーデターを呼びかけるなど不穏な動きも一部で見られた。

ボルソナロ氏はこうした抗議行動について、選挙プロセスを巡る「憤りと不公平感」の表れだと指摘しながらも、破壊や交通の妨げをするべきでないと支持者に訴えた。ただ、抗議をやめて帰宅するよう促す発言はなかった。

ホールド・レジスラティブ・アドバイザーズの政治リスクアナリストは「ボルソナロ氏は火を消していない。過激な支持者を結集させたままにしている」と述べた。

サンパウロ近郊でデモに参加した女性は抗議を続けるとし、ルラ政権を受け入れないと語った。

ボルソナロ氏は演説で、選挙システムが不正に満ちているという根拠のない主張は繰り返さなかった。ただ、選挙プロセスを巡る「不公平感」という発言についてベクター・コンサルタンシーの政治アナリストは、トランプ前米大統領から学んだものだと指摘。「今後4年間、トランプ氏をまねて自身の保守運動を存続させるだろう」と述べた。

一方、ルラ氏が所属する労働党は、アルキミン次期副大統領が政権移行の調整役を務めると発表した。ホフマン党首とメルカダンテ元教育相が補佐するという。