[31日 ロイター] – エジプトのシャルムエルシェイクで6―18日に開かれる国連気候変動枠組み条約第27回締約国会議(COP27)では、クリーンエネルギー移行のための資金調達から森林保護まで、幅広い議題が話し合われる。中でも特に注目度の高い議題について、以下にまとめた。
<化石燃料の将来>
昨年のCOP26は、石炭生産の「段階的廃止」及び、その他の化石燃料への補助金削減に初めて合意した。化石燃料向け資金提供の抑制、温室効果の高いメタンの排出制限などについて、自発的な宣言も複数採択された。
しかし、ウクライナ戦争によりエネルギー供給に混乱が生じたことで、一部の欧州連合(EU)加盟国は石炭火力発電所の稼働を再開・延長したり、液化天然ガス(LNG)の輸入を確保したりすることになった。
一方、中国は炭鉱の新規開発を認可し続け、ベトナムとインドネシアは石炭生産の増加を模索している。
主要国が化石燃料削減の約束を後退させているため、アフリカを筆頭に一部の国々からは、自国に眠る化石燃料を開発することへの正式承認を求める声が上がっている。COP27では、アフリカ首脳による冒頭声明でこうした主張が明らかになりそうだ。
<損失と損害>
COP27の主催国であるエジプトは、気候変動による災害への補償、すなわち「損失と損害」問題を重要議題としている。この問題は長年議論されてきたが、COPの正式議題となったことはない。
歴史的規模の気候関連災害の責任が先進国にあることを示唆する資金提供メカニズムの構築に対し、先進国が抵抗を示してきたからだ。
先進国が気候関連災害に関する資金提供の約束を果たさないことに業を煮やし、途上国は今年、結束して「損失と災害」基金の設立を要求した。米国とEUは以前に比べて真剣な議論に前向きな姿勢を示しているが、基金の設立には依然として消極的だ。
米国はCOP27に先立ち、補償に使える別の資金提供方法を編み出すことと、国際的な開発銀行を改革して気候危機に対応しやすくすることに焦点を絞るべきだ、との考えを示した。
<適応>
先進国は気候変動に関して年間1000億ドルの資金提供を約束しているが、実現していない。2019年の資金提供は800億ドルにとどまった。それでも、会議では2025年から年間の目標額をさらに引き上げることが議題になる。
これまでのところ、提供資金の約4分の1は各国が地球温暖化に「適応」するためのプロジェクトに充てられてきた。低所得国や気候変動の影響を被りやすい国々は、適応に振り向けられる資金の割合を2025年以降、確実に倍増することを望んでいる。
これは昨年のCOP26で合意した目標だが、専門家によると、必要な額にはなお届かない。国連の推計では、途上国の適応コストは2030年に計3000億ドルに達する見通しだ。
<開発銀行>
国際金融機関の改革を求める声は、高いレベルから上がっている。10月の世界銀行総会で米国とドイツは、世銀が国別ではなく世界規模の気候変動などの課題に対応できるよう、「根本的な改革」を行うことを提唱した。
一部の改革派は、中低所得国が高い金利を払う事態を防ぐため、助成金や無利子融資を増やすべきだと訴えている。
米国のケリー大統領特使は9月の講演で国際開発銀行の改革を訴え、出資国による新たな資金拠出や格下げのリスクを伴わずに「MDB(多国籍開発銀行)の融資能力を数千億ドル増やせる」可能性を示す提言が、複数出ていると指摘した。
<1.5度目標を維持>
昨年のCOP26では、地球温暖化を産業革命前に比べて摂氏1.5度に抑えるというパリ合意を達成するため、各国が温室効果ガスの排出目標を示す「国が決定する貢献(NDC)」を今年末までに「再点検し強化する」との宣言が出された。
だが、国連が10月に出した報告書では、今年は194カ国中24カ国しかNDCを更新していない。
COP27では、幾つか新たな動きがあるかもしれない。オーストラリアの新政権は、2030年までの温室効果ガス排出量削減率を43%に引き上げた。2015年には、2005年を基準とした30年までの削減率目標を26─28%としていたため、大幅な前進だ。
チリ、メキシコ、トルコ、ベトナムの各国も新たな計画を発表する見通し。
また、ブラジルの大統領選でルラ元大統領が勝利したことは、森林破壊の停止に向けた世界的な取り組みにとって追い風となる。