リーディー・ガロウド

  • 強豪のスペインとドイツを撃破、掃除よりもプレーに印象
  • 参加への意義が強調され過ぎる日本、勝負に注目を
Japan squad celebrates Ritsu Doan goal equalizer during the FIFA World Cup Qatar 2022 Group E match between Germany and Japan on November 23, 2022. Photographer: Lionel Hahn/Getty Images Europe

サッカーワールドカップ(W杯)カタール大会で、日本はスタジアムを片付ける以上のことができると証明した。強豪のスペイン、ドイツをも片付けた。

  W杯優勝4回を誇るドイツに初戦で衝撃的な逆転勝ちを収めた後ですら、広く取り上げられたのはフィールド外の活動の方だ。選手とファンが試合後にロッカールームやスタジアムを掃除した様子は、とりわけ注目を集めた。

  清潔さに対する日本のこだわりは、W杯では国内外のメディアが毎回報じる材料だ。もちろん悪意からの報道ではないのだが、日本代表の試合自体に対する注目の低さと比べると、見下されているような感じも受ける。日本代表の試合ぶりは、今や無視しがたい。主将の吉田麻也選手は最近のNHKとのインタビューでいみじくもこう語っていた。

  「日本だとよく『グッドルーザー』みたいな感じで、すごい美化されるじゃないですか。まさに4年前の僕たちがそう。日本に帰ってきて、みんなに褒められて、自分の感覚と周りの人たちは全く違う感覚なんだなとわかって、それじゃダメだなと。『もうグッドルーザーはいいよ』って正直思っているんです。日本はグッドルーザーで、ロッカーも掃除して、すばらしい国だったなとか、そこが評価されるとか、正直そんなのはもういいんですよ。グッドルーザーよりウィナーになりたいです。うん、勝ちたい。勝って日本の新しい歴史をつくりたい、新しい景色を見たいな。それがいちばん強いですね」。

  「死の組」と呼ばれるグループに入りながらも強豪2国を倒して予想外の首位通過を果たした日本には、ファンの試合後の振る舞いよりもサッカーのプレー内容にもう少し注意が向けられ始めるべきだ。

  吉田選手の言葉は、日本への全般的な教訓も提示している。日本では参加することへの意義が強調され過ぎることが多い。企業活動や国際政治の場でもそうで、そこでの勝負内容はあまり問題にされない。富士フイルムなどの日本企業がW杯の広告を独占していた時代はとうに過ぎ、今では中国企業に圧倒されているように見える。かつて強力だった経済は低迷、世界的な重要性も落ち込み、外国メディアの報道と言えば清潔さに焦点を当てた好意的なものから乏しい性生活に関するありがたくない内容まで、ステレオタイプが多い。

  だが、過去20年のスポーツの成績は誇ることができそうだ。野球の大谷翔平、テニスの大坂なおみら、世界的な本物のスター選手が増えている。

  スポーツ育成に数十年にわたり取り組んできた日本は、これを今後も継続する必要がある。決勝トーナメント1回戦で対戦するクロアチアは、前回の準優勝国だ。だが、スペインとドイツを倒した日本が、ピークを越えたように見えるクロアチアを恐れる必要はない。順当に行けば、準々決勝の相手は今回の優勝候補最右翼に挙がるブラジルだ。ブックメーカーのパディーパワーは、日本のW杯優勝を81倍としており、見込みがかなり薄いことを示す。だが、今週の立派な戦いで、清潔さ以外で人々に強烈な印象を残すこともできるはずだ。

(リーディー・ガロウド氏はブルームバーグ・オピニオンのコラムニストです。このコラムの内容は必ずしも編集部やブルームバーグ・エル・ピー、オーナーらの意見を反映するものではありません)

原題:This Japan World Cup Team Does More Than Tidy Up: Gearoid Reidy(抜粋)