Greg Ritchie
- BIS報告、「所在不明のまま膨張しつつある巨額の」債務を警告
- 流動性支援策は「視界不良」の中で設定される、情報の欠落で
推定65兆ドル(約8820兆円)の「見えない」ドルを米国外の機関が通貨デリバティブを通してバランスシート外に保有しており、次の金融危機の予測を困難にしていると、国際決済銀行(BIS)が指摘した。
BISの報告によれば、この短期の見えない借り入れは年金基金などが外貨スワップなどのデリバティブで借り入れた「所在が分からないまま膨張しつつある巨額の」債務の一部を成している。
BISがこれを問題視しているのは、外貨スワップが世界的な金融危機と新型コロナウイルスのパンデミック(世界的大流行)初期の両方において発火点だったからであり、いずれの危機もドル資金調達にかかるストレスで各国中央銀行は借り手支援の介入を余儀なくされた。
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「大規模な簿外債務の存在を何人のアナリストが認識しているかさえ不明だ」と、研究員のクラウディオ・ボリオ、ロバート・マコーリー、パトリック・マグワイア3氏はこうしたドル債務に関する情報の欠落は政策当局者を不利にしていると指摘する。
「従って危機時には、金融システムで円滑な短期ドル・フローを回復するための中銀スワップラインといった政策が、視界不良の中で設定されることになる」と論文で説明した。
原題:A $65 Trillion Wall of ‘Missing’ Derivatives Debt Sparks Concern(抜粋)