Eric Mack  CONTRIBUTOR
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極超巨星のイメージ図。極超巨星は既知の恒星の中で特に大きいものの1つで、質量は太陽の250倍にも上る。激しい太陽風と強い放射線を宇宙の彼方まで放出することで、著しく遠くからでもこれらの星を見ることができる。超新星爆発と呼ばれる大爆発とともに命を終えることもある(Getty Images)

ケフェウス座RW星(RW Cephei)は、人類の知る最も大きい恒星の1つで、直径が私たちの太陽の1000倍以上と考えられている赤い極超巨星だ。

ところが現在、その星は天文学者のいう「大減光」現象が起こっている。これは数年前にベテルギウスで起きたのと似た現象で、当時ベテルギウスは超新星爆発の直前なのではないかと推測する人たちもいた。

「ケフェウス座RW星は、再増光することなく著しく減光しています。ケフェウス座RW星で起きているこの現象は、2019年の終わりに赤色超巨星、ベテルギウスで起きたものと似ているといえるかもしれません」と欧州の天体観測者ウルフギャング・ヴォルマンとコンスタンティノ・シギシスモンディの2人はAstronomers’s Telegramに書いている。

ベテルギウスとケフェウス座RW星という超巨星と極超巨星は、現在知られている最大級の星だ。通常それらは、星の進化の中で不安定になるまで拡大した状態にあり、崩壊して超新星爆発を引き起こす可能性が高いと考えられている。

2019年にベテルギウスの著しい減光が観測されたとき、崩壊の始まりが見られるのではないかと考える人たちもいた。しかし3年以上経った現在も、そのような崩壊は起きておらず、この赤色巨星はほぼかつての状態に戻っている。科学者の間では、その大減光はベテルギウスが大量のガスの泡を放出していたものと考えられている。

そう、つまりあれは宇宙の「おなら」に関する大騒動だった。


極超巨星、ベテルギウスの想像図。ベテルギウスはESO(欧州宇宙機関)の超大型望遠鏡VLTのさまざまな最先端技術によって発見された。図の目盛りは太陽系の大きさと比較している。左軸:ベテルギウスの直径単位、右軸:AU(天文単位)(ESO/L. Calçada, https://www.eso.org/public/images/eso0927d/)

これは、私たちが大爆発直前のベテルギウスがゆっくり死んでいくところを目撃していないという意味ではない。星の進化は長大な時間軸に沿って起きるからだ。

今から何十億年後のいつか、太陽が成長して地球をはじめとする他の太陽系の惑星を飲み込んでしまうかもしれないという話を聞いたことがあるかもしれない。これはケフェウスRW星が現在経験している段階だ。もしこの極超巨星を私たちの太陽系の中心に置いたなら、木星の軌道まで届く大きさとなる。

もう1つ知っておくべき重要なことは、超巨星や極超巨星のほとんどが変光星と呼ばれる種類の恒星であり、時間とともに減光と増光を繰り返していることだ。天文学者たちはこれらの恒星を何十年も観測し、減光と再増光の通常サイクルと思われるものを追跡している。

2019年のベテルギウスと2022年のケフェウス座RW星の減光で注目すべきなのは、これらの星の明るさがそれぞれの通常の変動範囲を超えているらしいことだ。

つまり、見方によっては天の川銀河で3番目に大きい星で少々おかしなことが起きている。それは、壮大な天文現象の序章かもしれないし、何でもないかもしれない。

いずれにせよ、世界中のプロ・アマ天文学者たちはこの巨大な星をより良い条件で観測し、宇宙の歴史の一端をとらえるべく、すでに望遠鏡の訓練を始めている。

forbes.com 原文

    翻訳=高橋信夫