[東京 13日 ロイター] – 亀田制作・前日銀調査統計局長(SOMPOインスティチュート・プラスのエグゼクティブ・エコノミスト)は13日、ロイターとのインタビューで、日銀は賃上げと物価上昇の流れに自信を深めているとの見方を示す一方、自身は賃金上昇の持続性に懐疑的だと語った。日本経済は近く新型コロナウイルス禍以前の水準に回復するが、ペントアップ需要が一巡し、海外経済も減速、来年度後半は「厳しい」局面を迎えるのではないかとの見通しを示した。

亀田氏は、賃金動向を見る上で春闘の集中回答日の結果が「非常に大きな情報になってくる」と指摘。また、中小企業への賃上げの波及を確認するには毎月勤労統計や連合による中小企業の賃上げ率が重要になるとした。その上で、「日銀は(賃金動向に)かなり強気なのではないか」と述べた。ある程度賃上げへの流れができれば、それが続いていくと日銀はみているようだと説明した。

デフレが長く続いた日本でも原材料高と円安で物価が上昇しており、景気の落ち込みを懸念する岸田文雄政権は大幅な賃上げを経済界に呼び掛けている。経団連なども前向きに応じており、今年の春闘は賃上げの機運が例年以上に高まっている。亀田氏は、賃金上昇を伴う物価の上昇という好循環が強まっていくという、これまで日銀が示してきたシナリオの実現性が高まれば、現行の金融政策の修正議論が可能になるとの認識を示した。

日銀は17―18日の金融政策決定会合で新たな展望リポートを議論する。昨年10月の展望リポートでは、22年度の生鮮食品とエネルギーを除く消費者物価指数(コアコアCPI)の政策委員の見通し中央値は前年度比プラス1.8%、23年度と24年度はプラス1.6%。複数の関係者によると、今回の見通しではいずれも引き上げられる公算が大きい。

亀田氏は、23年度はエネルギー以外の日用品や食品の値上げが思った以上に続いているため、多少上振れの可能性があるものの、24年度は「大きく動かす情報がこの3カ月間なかったのではないか」と指摘した。日銀の賃金に対する見方がより強く反映されるのは、春闘の集中回答日の結果が出た後の4月の展望リポートになるのではないかと述べた。

一方で亀田氏は、「賃上げ自体にどこまでの持続性があるか私はまだ懐疑的だ」と語った。日本経済は値上げが広範囲に進む中でもコロナ禍からの景気回復が消費を支えてきたが、景気がコロナ前の水準に戻る来年度半ば以降は下方圧力が掛かると予想した。

亀田氏は「何か別の推進力がないと景気や値上げの浸透は続かない」と指摘。来年度後半の日本経済は「厳しいものになると予想している」と述べた。

(和田崇彦、木原麗花 編集:久保信博)