広島サミットを無事に乗り切った岸田政権、支持率が上昇して順風満帆とお思いきや、次々と難題が表面化してきた。果たして会期末の解散・総選挙はあるのか、なんとなく逆風が強まりつつあるような気がする。けさの朝日新聞によると岸田内閣の支持率は46%(前回4月調査は38%)に上昇した。不支持率は42%(同45%)で前回に比べ3%下落。広島サミットで総理自ら「指導力を発揮した」と答えた人が59%、「そうは思わない」の32%を大幅に上回った。なんといってもウクライナのゼレンスキー大統領が対面で出席したことが大きかった。水面下で同大統領の出席に尽力した内閣の努力が報われた格好でもある。ウクライナ戦争のまっただ中、地盤の広島でサミットを開催できたことも支持率のアップにつながった。幸運にも恵まれたというべきかもしれない。岸田首相にとってはここまでは想定通りの展開だっただろう。

だが、そんな幸運をみずから打ち消すような事態が次々と発生する。一つは総理秘書官をつとめている長男の、お粗末な官邸での公私混同。官邸の居住区域で昨年暮れに身内だけの懇親会を開催。勢い余って公邸の階段で記念撮影をしたといいうのだ。この階段には赤絨毯が敷いてあり、内閣発足時に閣僚がそろって記念撮影を行う場所だ。総理の主席秘書官(政務担当)とはいえ、公邸の私的利用はどうみても公私混同だ。安倍総理の昭恵夫人も時々公邸を利用していた。だが、昭恵氏は総理夫人とはいえ公的立場は私人にすぎない。これに対して長男氏は列記とした公的肩書を持っている。報酬は高いし、主席秘書官ともなれば公務員としての格は大臣級ともいわれる。選挙も近い。大臣が身内をあつめて公邸で写真撮影すれば、選挙目当ての私的利用とマスメディアには叩かれるだろう。軽率では済まない。

続いて起こったのが20年間政権をともにしてきた公明党との亀裂だ。増設された東京28区をめぐる公認調整のもつれが発端だが、相思相愛の関係にヒビが入った原因はそれだけではないだろう。自公両党の間を取り持つ人脈が岸田政権になって急速に細ったといわれている。両党をつなぐ太いパイプ役の1人は菅前総理である。自公がギクシャクとした関係になった裏には、岸田氏と菅氏の“対立”が隠されているのかもしれない。いずれにしても広島サミットで点数を上げたのに身内の不始末と公明党の反乱で、解散・総選挙の行方もにわかに雲行きが怪しくなってきた。それだけではない。官邸での写真撮影には岸田総理も収まっているとの風説が流れている。これが事実だとすれば解散どころではなくなる。厳重注意は長男ではなく、自らが対象になる。政界の常套句は“一寸先は闇”。得意の外交で支持率アップに漕ぎ付けたのも束の間、自公の安定政権に崩壊の危機が迫ってきた。有権者から見れば私利私欲の争いでしかないが・・・。