▽米が「AAA」格付け失う、フィッチ格下げ-財務長官は強く反論<bloomberg日本語版>2023年8月2日 6:22 JST
Jim Silver
- 予想される財政の悪化、高水準で拡大しつつある政府債務負担に言及
- 米国債は安全な流動性資産であり、米経済は基本的に健全と財務長官
格付け会社フィッチ・レーティングスは1日、米国の長期外貨建て債格付けを「AAA」から「AA+」に引き下げたと発表した。「ウオッチネガティブ」としていた格付け見通しは「安定的」に変更した。
フィッチは「米国の格下げは今後3年で予想される財政状況の悪化、高水準で拡大しつつある一般政府債務負担、過去20年間の他のAAおよびAAA格付け諸国・地域と比較したガバナンス(統治)の低下を反映している」と発表資料で説明した。
ブルームバーグのデータによれば、フィッチは少なくとも1994年から米国のAAA格付けを維持してきた。米政府の借り入れを巡る大掛かりな政治闘争と、連邦債務上限の引き上げで対立が繰り返される状況で、フィッチによる格下げが発表された。
イエレン米財務長官は「フィッチ・レーティングスの決定に強く異議を唱える」とした上で、「世界中の人々と投資家、米国民が既に知っている通り、財務省証券は引き続き世界的に見て卓越して安全な流動性資産であり、米経済は基本的に健全だ。フィッチの決定はそれを変えるものではない」と反論した。
バイデン政権の当局者も記者団に対し、フィッチの決定は「奇妙で根拠がない」と指摘し、同社との見解の相違は1日の発表前に共用されていたと明らかにした。借り入れコストに影響は出ないと考えており、市場が反応すれば驚きだろうと当局者は述べた。
原題:United States Downgraded to AA+ by Fitch, Outlook Stable (1)、
US Stripped of Top Rating by Fitch in Echo of 2011 Move by S&P、
Yellen Says Fitch Downgrade Arbitrary, Based on Outdated Data、
Biden Admin Officials Engaged With Fitch Ahead of Decision(抜粋)
▽米格付け、フィッチが「AA+」に引き下げ:識者はこうみる<ロイター日本語版>2023年8月2日9:22 午前
[1日 ロイター] - 格付け会社フィッチは8月1日、米国の外貨建て長期債格付けを「AAA」から「AAプラス」に引き下げた。向こう3年間に予想される財政悪化に加え、一般政府債務が高水準で増加していることを反映した。見通しは安定的。市場関係者の見方は以下の通り。
●財政再建なければドルが犠牲に
<LPLファイナンシャルのチーフ・グローバル・ストラテジスト、クインシー・クロスビー氏>
エコノミストは赤字を見て、赤字拡大に伴い通貨が弱まると考える。教科書ではそうだ。フィッチはその教科書的な理論にわれわれを当てはめようとしている。皮肉なことにドルは多くの場合、赤字を抱えながらも他の通貨に対して上昇してきた。
これは警告だ。エコノミストは米国が財政再建をしなければ通貨安になるというが、通貨安にはなっていない。フィッチが本質的に言っているのは、それが今後起きてドルが犠牲になるということだ。
●根本的に状況変わらず、2011年時と相違
<エドワード・ジョーンズのシニア投資ストラテジスト、アンジェロ・コーカファス氏>
タイミングは確かにサプライズだ。市場はこのところ非常に落ち着いていたことから、格下げを受けて明日はやや売られるか注視する。
根本的に状況が変わるとは必ずしも思わない。(2011年の格下げ時には)市場が10%下落したが、当時は債務上限を巡る「Xデー」(政府の資金繰りが行き詰まる日)が非常に近かった。今回はXデーをとうに通過している。今は市場の背景が異なる。
当時は金融危機後で経済もはるかに不安定な状態だった。
●市場にサプライズ与えず
<アルビオン・フィナンシャルの最高投資責任者(CIO)、ジェイソン・ウエア氏>
フィッチが米国の「AAA」格付けをネガティブウォッチに指定したのは5月だったので、格下げのタイミングがきょうだと予想できなかったとしても大きなサプライズではない。
米国債の格下げは過去にも行われているため市場で意表を突かれた人はいないだろう。12年前の格下げは買いの機会となった。このため、長期投資の戦略をとる投資家をはじめ、フィッチの格下げで株式売却を決める動きは限定的になるだろう。