米フェルミ国立加速器研究所などの国際研究チームは10日、素粒子の一種である「ミュー粒子」の振る舞いが、現代物理学の基本法則である「標準理論」の予測からずれているとの実験結果を公表した。「暗黒物質」など、従来の物理学では説明できていない未知の素粒子や力の存在を示唆している。
研究チームは、磁石のような性質を持つミュー粒子を直径約14メートルのリング状の装置に閉じ込めて回転させ、磁力を精密に測定する「ミューオンg-2実験」を2018年に開始。21年には初期のデータを解析し、標準理論の予測値と合わないと発表していた。
今回は前回のデータ量の4倍に相当するデータを解析し、測定結果の誤差を半分に抑えた上で、理論の予測値と実験値がずれているとの結果を得た。最終結果は25年に公表される見通しで、ずれが確定すれば標準理論を超えた新しい理論の構築の必要性が高まる。
ただ、スーパーコンピューターを用いた新しい計算方法により、これまでと異なる理論の予測値が示されており、理論と実験のずれを確定するには今後の研究の進展が求められる。
実験値については、別の実験方法で測定した結果を用いて検証するため、日本の高エネルギー加速器研究機構(KEK)が茨城県東海村で実験の準備を進めている。
同機構の三部勉教授は、「標準理論は、暗黒物質の正体なども説明できておらず、素粒子の現象を統一的に表している理論とはいえない。背後にある大本の理論は何なのかを見いだすため、研究を進めたい」と話した。